F1日本GPでのビアンキ選手の事故に関して、国際自動車連盟が初めて会見を開く~「我々レース運営側の対応に非はなく、最善を尽くした」との調査報告に対して、「FIAの信じられない自己弁護」と伊紙が痛烈に批判
国際自動車連盟(FIA)は10日夜(日本時間11日午前)、5日に鈴鹿サーキットで行われたF1日本GPでジュール・ビアンキ選手(25歳)=フランス=が意識不明となった事故について、事故後初めて会見を開き、レースディレクターであるチャーリー・ホワイティング氏が事故調査報告書を公表した。コリエレ・デッラ・セーラ、ガゼッタ・デッロ・スポルトなど各紙が報じている。
FIA会長のジャン・トッド氏も出席した会見では、コース上の固定カメラが撮影した事故映像が初めて報道陣に公開された。それによれば、ビアンキ選手は左コーナーのダンロップでリアが滑り出し、続いてカウンターを当てて(進行方向に向かってやや右を向きながら)ほとんど減速しないでまっすぐコースアウトし、エスケープゾーンに止まっていた重機に衝突した。
ホワイティング氏の説明によれば、鈴鹿で起きた事故は、FIAのルールに欠陥があったのではなく、いくつかの不運が偶発的に重なって起きた「不可避なもの」。このため即座にレギュレーションを変更するつもりはない、とした。ただし、今後二度とこのような事故を起こさないよう、来季からは、イエローフラッグが提示された際は強制的にマシンを安全速度まで減速させるなどの対策を講じる必要性はある、としている。
会見のニュースは、当然ながら日本国内でもレース専門誌を中心に報じられたが、それらが概ねFIA側の発言を淡々と(中立的に)伝えているのに対して、イタリアメディアの記事ではFIAを糾弾する姿勢がうかがえる。
イタリアの全国紙で最大の部数を持つコリエレ・デッラ・セーラ紙は、オンライン版で「ビアンキ選手の事故は不可避だった?FIAの信じられない自己弁護」との見出しを掲げ、アリアンナ・ラヴェッリ記者が痛烈に批判。
「自らに無罪の判決を下したばかりか、自分たちの対応を称賛した。だが、レース責任者のホワイティング氏が、自らの手でまとめた事故報告書の中で、自分たちに責任はないとするのは不思議なことではない」
「FIAの規約の中で、このような重大事故が発生した場合、第三者による調査委員会を設けるという事項がないのは全くもって馬鹿げている」
「これまでのレースと比較しても、あの場面は特にセーフティカーが入る状況ではなかったと彼は説明する。だがそれは、これまでがたまたまうまくいったに過ぎない。彼の説明は、現在ビアンキ選手に付き添っている父親を納得させることはできないだろう」
などと反撥している。
また、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙のアンドレア・クレモネージ記者も、
「ホワイティング氏は、あの忌まわしい重機については多くを語ろうとしなかった。が、そんな彼も不本意ながら認めている。もしビアンキ選手が(重機ではなく)タイヤバリアに衝突していたならば、2008年のバロセロナのコバライネン選手と同じような結果(無傷)だったろう、と。その通りだ。そのフィンランド人は今も元気であり、ビアンキ選手は、ただただ祈りをささげるしかない状態である」
「トッド氏は、ホワイティング氏らと彼らのプロフェッショナルな仕事ぶりを信じている、と語った。だが、鈴鹿の悲劇に関しては、すべての疑問が解けたわけではない。たとえば(悪天候の中での午後3時という)レース開始時刻、コース上の暗がり、ヘリコプターではなく救急車でビアンキ選手を病院に搬送したこと。FIAの規定では、25分以内に病院に搬送しなければならないが、32分を要している。医療部門の責任者は、この7分の遅れはビアンキ選手の容態に少しも影響を及ぼしていない、と説明しているが……」
会見という“公の場”では、トッド会長はホワイティング氏らスタッフを一応擁護したが、今後、専門家を集めた特別委員会を設けて、同報告書を精査していく意向も示しているという。