375万人の「ニート」対策に頭を悩ますイタリア産業界

2013年12月15日 12:47

イタリア政府中央統計局(ISTAT)はこのほど、今年度第3四半期における同国内の「ニート」人口を発表した。

ニート(NEET)とは、「Not in Education,Employment or Training」の略で「就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない状態」の若者を指した用語。

発表によると、15歳~34歳のニートの数は375万人で、彼らの36%が南部在住である。

この数がどれだけ“すごい”のか。ニートの定義は多少違うが、日本と比較してみよう。政府が6月に発表した2013年度「子ども・若者白書」によると、2012年の国内ニート数は63万人。日本でも社会問題化して久しいが、イタリアにおける惨状はその比ではない。イタリアでは、いつまでも親の脛をかじる「馬鹿息子(娘)」のことを「bamboccione(バンボッチョ-ネ)」と揶揄するが、もはや両親の脛も骨ばかりの状態である。

ニートが増えるということは、生産人口の減少(それでなくとも少子化が進んでいるのに!)、さらには国の経済力が低下していくことを意味する。

それだけに、イタリア産業総連盟(Confindustria)も危機感を募らせ、数々の対策を講じて始めているが、同連盟のデータによると、さらにショッキングな状況が浮かび上がってくる。

それによると、2012年における15歳~29歳のニート数は225万人で前年比4・4%増。この5年間では21・1%増となる。彼らのうち就活をしている者は40%にすぎない。言い換えれば、40万人近くの若者がリセッションの最中に「人生を建設的に過ごすためにあらゆることをする努力を捨てた」のである。

さらに問題なのは、働くことへの意欲の低下に加えて、学業を続けようという意欲もイタリアの若者たちには少ないという点である。

25歳~34歳における大学卒業資格保持者は21%、欧州全体の34・1%を大幅に下回る。全人口に占める「学士」の割合は18%(欧州平均は30%)。イタリアの教育水準は欧州でも最低レベルにあるといってよいだろう。ちなみに、15歳の韓国人のうち80%が「勉強を続けたい」と答えるのに対し、イタリア人には41%しかいないというデータもある。

こうした学業への意欲の低下は、さらなる就職難につながり、企業の国際競争力のダウンという「負の連鎖」を生むことになる。

かつて、イタリアといえば、「勤め人」志向よりも「起業」志向が強いことで有名だった。ところが、ISTATの最新調査によると、こうしたイタリア人気質にも変化が見られる。リセッションが始まった2008年以降、若手企業家の数は18%減となった。数にして8万2000人以上の企業家が消えたことになる。そして、信じられないことに、減少の激しい地域が北部、とりわけイタリアの中でも“裕福な地方”といわれる「4つのベネト」(ビチェンツァ・トレビーゾ・ベネチア・ベッルーノ)というのだ。

イタリア産業総連盟では、こうした窮状に風穴を開けるべく、『Fuoriclasse!』と銘打った学生就業支援イベントを今年開催した。

「フオリクラッセ」とは元来、超一流クラスのスポーツ選手を指すが、ここでは、「Fuori=外に」「classe=教室」で、「学生を教室の机から引きはがし、オフィスや工場に連れ出せ!」とのスローガンである。企業家と学生たちを結びつける場を設けることが主眼だが、こうした革新的試みも他の欧州先進国に比べると遅れているのが現状だ。