短歌を詠む

2014年05月17日 11:21

医師でもある兄が入院した。難病なのだという。

見舞いに行ってきた。思ったより元気だったが、

これから過酷な治療が始まるから、と不安げな顔でつぶやいた。

帰り道、母と話した。「何の因果か」。そう、こういう時は必ず自問するものだ。

なぜ兄であって、僕でなかったかと。

初めて短歌を詠んでみた。

「まぼろしか誰の代わりに兄ひとり病を背負い夢に戻るる」

「白衣脱ぐ兄の姿は悲しくも病背負いて潔し」

「病室の兄の握手はやわらかく返す言葉のどこかちぐはぐ」

「百年も今も変わらぬ蜃気楼幼き日々の兄を訪ねて」

「万緑の誰をも包む宇宙から歩み出す兄病背負いて」