大雨のF1日本GPで起きたビアンキ選手の重体事故、伊紙は「レース主催者はもっと早くレースを中断すべきだった」とのマッサ選手の声を取り上げる
台風接近に伴う悪天候の中で行なわれたF1日本GP決勝で、レース終盤に重大事故が発生してしまった。42周目のダンロップコーナーでザウバーチームのエイドリアン・スーティル選手(ドイツ)がスピンしてタイヤバリアにクラッシュ。スーティル選手に怪我はなかったものの、同選手のマシンを撤去している最中、44周目、またも同じ場所で今度はマルシャチームのジュール・ビアンキ選手(フランス)がクラッシュし、撤去作業中の重機車に激突した。
駆けつけたマーシャルの要請でセーフティーカーが導入され、その後、レースは46周で打ち切られた。ビアンキ選手はすぐに救急車で三重総合医療センターへ搬送。FIAの発表によると、同選手は意識不明で、CTスキャンで検査を行なった結果、頭部にダメージがあることが判明し緊急手術を受けている。
ビアンキ選手の事故のニュースは、イタリアのメディアでも(というより日本のメディアよりもはるかに)大々的に報じられており、コリエレ・デッラ・セーラ紙オンライン版ではトップ扱いとなっている。これは欧州ではF1のステータスが極めて高いということもあるが、イタリアでは今から20年前の1994年、アイルトン・セナ選手とローランド・ラッツェンバーガー選手がイモラサーキットでのサンマリノGPで相次いで事故死する悲劇が起きていることも大きく関係している。2人の死亡事故以降、幸いにもこれまでF1レースにおける死亡事故は起きていないだけに、ファンは固唾をのんでビアンキ選手の動向を見守っている。
コリエレ・デッラ・セーラ紙オンライン版では、故セナ選手の祖国ブラジルの後輩ドライバーであるフェリペ・マッサ選手(ウィリアムズ)が、日本GP主催者側がレース打ち切りを判断するのが遅すぎた、とする声を掲載している。
マッサ選手は、スカイスポーツのインタビューに対して怒りをあらわにしてこう語っている。
「セーフティカーが入る前から、僕は5周にわたって無線で叫び続けていたんだ。レースを止めるべきだ、と。だって前が全く見えなかったんだ。でも彼らが判断を下すのに時間がかかりすぎて、事故が起きてしまった」
大粒の雨が降りしきる中、セーフティーカー先導でレースはスタートした。雨脚は強くなる一方で2周を終えたところで赤旗が出されレース中断となった。20分にレース再開となり、10周目にセーフティーカー先導が解かれたものの、マッサによると「レースをスタートするのが早すぎたんだ。レースができるような状態ではなかった? 当たり前だよ。最初から運転できるような状態ではなかった。前が全く見えなかったんだ。レースを止めるのも遅すぎた」
一方でFIAは「ヘリコプターが飛べない天候だったため、ドライバーは救急車で病院に搬送された」との声明も出している。
いまはただ、ビアンキ選手の無事を祈るばかりだが、このFIAの声明が事実であるならば、なぜヘリコプターが飛べないほどの悪天候下でレースを続けなければならなかったのか、というよりも、そもそも台風接近で豪雨が予想される中、なぜレースが決行されたのか、その是非が問われるのは必至の情勢だ。