劇場の座席指定は、最前列から"身長の低い順"に~「ピッコロ・テアトロ・ディ・ミラノ」が画期的なオンライン予約システムを導入へ
劇場や映画館で時として遭遇する"煩わしさ"と言えば、前席の観客の頭によって視界が遮られること。とりわけ座高が高く、せわしなく動くタイプに"当たって"しまうと最悪だ。せっかくの名作観賞も台無しになり、中には対人トラブルを招くことすらある。そこで、このような不都合を解消し、小柄な人にも十分に芝居を楽しんでもらおうと、ミラノのある老舗劇場が身長の低い順に前方の座席を割り振るという"画期的"な座席指定システムの導入を決め、業界の話題を呼んでいる。
コリエレ・デッラ・セーラ紙が伝えるところによれば、この劇場は1947年1月にイタリア初の常設劇場として誕生した《Piccolo Teatro di Milano》で、パソコンからオンラインで座席を予約する際に身長の入力をcm単位で義務付けるというもの。すると専用アプリが自動的に背たけの低い人をより前方の席に割り振るというシステム。女性によっては背がそれほど高くなくとも髪型によって結果的に座高が高くなるケースもあるため、身長入力の際はそうした条件も考慮するという。同劇場では、現在アプリを開発中で、近く実験導入される予定という。
コリエレ紙のコメントによれば、この座席予約システムのアイデア自体は、「一時期多くの学校が導入した、すべての生徒が黒板を見ることができるように各教室に導入したものと同じ」という。しかし、決定的に違うのは「教室では体が最も小さい者が不幸な目にあった。なぜなら、最前列に座らされ、教師にしっかりと監視されるから。大きい生徒は幸運にも、前列の生徒たちの陰に隠れて自由にふるまうことができる。ところが、ピッコロ劇場の試み(おそらく、この実験は他の劇場でも導入されるであろう)では、まったく逆になる。すなわち、幸運の女神は、より小柄な観客に微笑む。なぜなら、俳優たちの演技を間近で見ることができるからだ。一方、背の高い人間は後ろに追いやられて、セリフはよく聞こえないし、演技も見にくくなる」
さらに同紙が"問題視"しているのは、この予約システムが観客たちの「誠実さ」にゆだねられていることだ。つまり、皆が身長をごまかさないで正直に"申告"するかどうか。年齢や体重をつい"低目に"公表しがちなように、身長も実際よりも低く偽証しないかどうかだ。また「プライバシーの保護」という面からも問題が残る。
こう考えると画期的と目されている新システムにも様々な弱点が見えてくるが、さてその結果はいかに。