元サッカーイタリア代表のアルベルティーニ氏が「自分を見つめ直す」ために800kmの『巡礼の旅』に挑む

2014年10月16日 23:30

元サッカーイタリア代表で、ACミランなどで活躍したデメトーリオ・アルベルティーニ氏(43歳)が約800kmにおよぶ「サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼」を自転車で行うことになり、16日、フランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポルを出発した。11日かけて終着点、スペイン・ガルシア州サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂を目指す。ガゼッタ・デッロ・スポルト紙が15日付け紙面で伝えている。

「巡礼の旅に出ることについては数年前から考えていたが、“熱すぎた”夏が過ぎた今が最良のタイミングだと思った。とにかく今は、日常性から離れて、自分の心身に付着した余分なものや快適さといった重荷を取り去りたい気持ちで一杯だ」

アルベルティーニ氏は、取材者のマルコ・イアリア記者にこう語った。

熱すぎた夏――。イタリアサッカー連盟(FIGC)の副会長を務めていたアルベルティーニ氏にとって、確かに今年の夏はこれまでの人生の中で最も過酷だった。

6月のブラジルW杯でのアッズーリの惨敗、その責任を取る形でジャンカルロ・アベーテ氏がFIGC会長を辞任した。

アルベルティーニ氏は「イタリアサッカー界の刷新」を掲げて会長選に立候補し、有力候補と目されていたカルロ・タヴェッキオ氏に一騎打ちを挑んだ。

だが、結果は大差の負け。選挙戦中に「人種差別発言」が飛び出し、国内外のサッカー界やメディアから糾弾されたタヴェッキオ氏を倒すことができなかった。アルベルティーニ氏はタヴェッキオ陣営から「労組の指導者」とのレッテルを貼られ、「そんな人物を連盟のトップにしてはならない」と攻撃された。

敗戦後、アルベルティーニ氏は“現場“からいったん離れて、次なる道を検討している。それはクラブチームなのか、それとも団体・組織なのか、本人は口にしない。だが、毎日4時間英語の勉強を続け、新たな知識を吸収しているという。今回の巡礼の旅は、新たな道に踏み出すためのこれ以上ない“充電”ともいえる。

敬虔なカトリック信者であるアルベルティーニ氏にとって、「聖地」を訪ねるのは今回が初めてではない。最近では、2、3年前にポルトガルのファティマを家族とともに訪れている。しかしながら、今回の巡礼の旅には多くの意図・意義が混じり合っている。宗教心、精神性、自分の肉体の限界を測りたいという気持ち、日々のルーチンからの脱却、古くて新しい文化を理解したいという欲求――。

「動機は全く個人的なもの。かつてアトレティコ・マドリーやバルセロナでプレーしていたという、スペインとの絆というのもある。さらには、自分の内面を探るチャンスでもある」

「そんな思いは、僕だけでなく皆の頭の中にあると思う。一生のうちに一度はしたいと誰もが願いつつ、結局は日々のしがらみから逃れられずに、一生を終えてしまうんだ」

が、それにしても、自転車とはいえピレネーの山路を11日で800km走破するのは並大抵の苦労では済まない。ワクワクする思いがある一方で、不安な気持ちも大きいという。

「体は人並み以上に鍛えてはきたが、1日に自転車で70km以上も走るというのは無茶なことだよね」

自転車を最大限軽くするため、リュックに詰めた荷物は最小限の着替えとカメラ、それとサッカーの試合結果を知るための携帯端末のみ。

夜はボランティアが運営する沿道の簡易宿泊施設で過ごす。様々な人間たちとの出会いが待っている。

11日間の「修行」を終えて、何をつかみ、何を捨てることができるのか。

長年着慣れたスーツやネクタイ、ワイシャツを脱ぎ捨て、久々にアスリートに戻る。とにかく、「全身に回ったサッカーの“毒”をいったん抜く」それだけでも、アルベルティーニ氏が得るものは少なくないだろう。

サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼

同地には古来より、聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)の遺骸があるとされ、1000年以上前より、ローマ、エルサレムと並んでキリスト教の三大巡礼地に数えられている。巡礼の道は、フランス各地からピレネー山脈を経由し、スペイン北部を通るもので、昨年の巡礼者数は約21万人。同都市と巡礼路は、それぞれ世界遺産に登録されている。