「ミラニスタ」のレッタ首相、イタリアサッカーを熱く語る

2013年12月23日 18:39

サッカー・セリエAの「ミラノダービー」が22日夜に行われ、インテルがアルゼンチン代表FWロドリゴ・パラシオの華麗なヒールキックで1対0でACミランに競り勝ち、対戦成績を67勝60敗52分けとした。同ダービーを前に、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙は、22日付け紙面の1面から3面までを割いて、熱烈なミラニスタ(ミランファン)であるエンリコ・レッタ伊首相(46歳)の独占インタビュー記事を掲載。レッタ氏は、サッカーチームでプレーする3人の息子たちのこと、イタリア期待のストライカーであるマリオ・バロテッリへの叱咤激励、そしてイタリアサッカーが抱える課題などについて熱く語っている。

中道左派と中道右派の大連合により誕生したレッタ政権。今年4月28日の首相就任以来、レッタ氏の人生は一変したが、唯一変わらない習慣があるという。

「それは、3人の息子、ジャコモ(9歳)、ロレンツォ(7歳)、フランチェスコ(5歳)と一緒に朝食をとりながら、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙に目を通すことなんだ。これは毎朝欠かせない儀式だね」

レッタ氏は筋金入りのミラニスタ。一方、妻のジャンナ・フレゴナーラさんはユベンティーナ(ユベントスファン)だ。

「2対1で彼女の勝ちさ。ジャコモはミラニスタだけど、残る2人はビアンコ・ネーリ(白黒のユベントスのユニフォームのこと)なんだ。デルビ(ダービーのイタリア語)は家族そろってテレビで見るよ。そして月曜(23日)はもう一つのデルビ、バスケット・セリエAのカウトゥ・ミラノ戦を一緒に楽しむんだ」

レッタ氏は普段、家族のプライバシー保護に関して厳しいが、少年サッカーチームでプレーする息子たちの話になると言葉に力がこもる。

「サッカーは父親と息子を結びつける絆。そして、父親のほかに、子どもたちのふるまいに大きな影響を与えるのが、彼らにとってのアイドル、サッカー選手だ」

そして子を持つ親として、プロサッカー選手たちには常にフェアプレーの精神を持つよう訴える。

「子供たちは、自分たちのスターが、審判や対戦相手、観客に対して見せる仕草や態度に共感を覚える。サッカーは人生のお手本を与えるということを、すべての選手が理解しなくてはならない。そして、プレーをする者は容易に“正道を逸脱する”ということも」

昨今、審判に対する侮辱的発言が目立つACミランの若きストライカー、マリオ・バロテッリに関して、

「彼がいま目の前にいるとして、何と言いたいか」とのインタビュアーの問いかけには、

「バロテッリには天性の力がある。W杯ブラジル大会における我々の『希望の星』だ。しかし、彼にはこう言いたい。君の一挙手一投足を子供たちが見て、それを真似する、ということを」

「私がサッカー選手たちに言いたいのは、行き過ぎた仕草、とりわけ審判員に対するものは、破壊的な影響力を持つということだ」

大好きな選手には、カカ(ACミラン)とハビエル・サネッティ(インテル)の名をあげる。

「2人は審判員を常にリスペクトしている。我々に多くのことを教えてくれるお手本だよ」

インテルサポーターが先のナポリ戦で差別的チャントをしたため、いったんリーグ側は制裁措置として今回のミラノダービーでのゴール裏観客席の閉鎖を発表した。結局、後に撤回されたものの、イタリアサッカー界における人種差別、南部差別の根は深い。そして、海外チームのサポーターとの暴力沙汰も後を絶たない。これらの問題に関して、首相としてどう思っているのか。

「クラブ側にサポーターを管理・教育する責任を負うよう要請する必要がある。こうしたクラブ側の責任を免除してはならない」

また、現在話題に上っている「サポーターに対する会員証の発行」に関しても、

「議論を始める準備はできている。現在、自治大臣と話し合っているところだ。ともかく新しいシステムを作り上げる必要がある。一般のファンが(危険を恐れて)スタジアムから遠ざかっているのは事実なんだ」と自ら積極的に関わっていくことを表明。

2015年にはミラノで国際博覧会(万博)が開催される。期間中多くの観光客が訪れるだけに、“生まれ変わった”イタリアサッカーをアピールするには絶好のチャンスとなる。

「(2024年)ローマ五輪の招致活動も見据えて取り組んでいかなければならない。スタジアムの改革は、五輪招致に向けても重要な一歩となる」と締めくくった。