伊サッカー協会の次期会長最有力候補が人種差別的発言、国内外に波紋広がる

2014年07月28日 23:50

イタリアサッカー協会の次期会長の最有力候補とされるカルロ・タヴェッキオ氏(71)がこのほど、演説の中で人種差別的発言をして、国内外から批判を浴びている。コリエレ・デッラ・セーラ、ガゼッタ・デッロ・スポルトなど各紙が報じている。

タヴェッキオ氏は25日、自身が会長を務めるイタリアサッカー・アマチュアリーグ協会での集会で、「英国サッカー界では、EU加盟国以外の外国人選手の受け入れに関して規約や審査が厳しく、母国でこれまで達成したプロ選手としての実績が記された経歴書を提出しなければ許可されない。ところがイタリアにおいては、それまでバナナを食べていた選手が突然セリエAでレギュラー選手になる」と発言、外国人選手の受け入れの厳格化を訴えた。

タヴェッキオ氏のこの発言がネット上で広がると、すぐさまツイッターなどのSNSを通して、国内外のサッカーファンや関係者らから猛然と非難が沸き起こった。

これまでアフリカ系やアジア系に対する白人の差別行為として、猿の好物であるバナナを相手に差し出したり、猿の真似をすることが多々あり、今回のタヴェッキオ氏の発言も、将来イタリアサッカー界のトップに立つ人間にとして、決して許されない内容であるからだ。

今年4月27日、スペインサッカー1部リーグのビジャレアル-バルセロナ戦で、ブラジル代表であるバルセロナのダニ・アウヴェス選手に対して相手サポーターからバナナがピッチ上に投げ込まれる出来事があった。その際、そのバナナを拾って皮をむいて食べてからCKを蹴るというアウヴェス選手の「人種差別に対する毅然とした返答」に世界中から賛同が巻き起こり、多くの選手や政治家・文化人らがバナナを手にし、食べる写真をインターネットに投稿し、人種差別撲滅を訴える"運動"が起きた。

あれからまだ3カ月しか経っていない中での今回のタヴェッキオ氏の"失言事件"。事は政治レベルにまで発展しており、イタリアの政権与党・中道左派の民主党の各議員からは「今回の彼の問題については議論の余地は全くない。失言などというレベルではなく、単なる人種差別。無知であり卑俗であり、このような人間が会長になるなどあり得ない」と、会長選の候補者を辞退するよう声が上がっている。

さらに、以前アウヴェス選手に対して、イタリア代表監督(当時)のチェーザレ・プランデッリ氏と一緒にバナナを食べる姿をメディアの前で披露し、連帯感をアピールしたマッテオ・レンツィ首相も「(発言内容は)言語道断、サッカーにたとえて言えば、とんでもないオウンゴールだ」と憮然とした表情。「とは言っても、これをもって政府がスポーツ団体の問題に直接介入するというのは間違い」と言い加えたものの、「我々は彼ら(イタリアサッカー協会)の自主性を尊重している、というコメントからは事実上のタヴェッキオ氏の「追放」を示唆している」とコリエレ・デッラ・セーラ紙は論じている。

当のタヴェッキオ氏は、"予期せぬバッシング"に慌てて、「バナナ発言? そんな言葉を使ったか全く覚えていない。ともかく私は、アフリカやその他の国からやってくる選手たちに対する『プロフェッショナル性』について言及しただけであり、もし、私の発言を(有色人種への)侮辱であると解釈した人がいたとすれば謝りたい。私は決して人種差別主義者ではない。むしろ正反対であることは、私のこれまでの人生が証明している」と"火消し"にやっきになるとともに、「会長選のプログラムにも記しているように、もし私が会長に当選したら協会はいかなる人種差別・偏見に対しても有効策を講じていく」として、会長選から降りることはないとの意向を示している。

しかしながら、同問題についてはFIFA(国際サッカー連盟)サイドも「イタリアサッカー協会はタヴェッキオ氏を尋問すべきである」とのコメントを発するなど、国際問題化の様相を呈している。

会長選は8月11日に行われる予定で、現在、タヴェッキオ氏のほか、かつてACミランなどで活躍した元イタリア代表MF、現イタリアサッカー協会副会長のデメトリオ・アルベルティーニ(42)が立候補。これまでは、セリエAやセリエBなど各リーグから広範な支持を受けたタヴェッキオ氏が優位に立っているという見方が流れていたが、今後、各クラブチームがどういう判断を示すか、その動きが注目される。