「人種差別発言」の伊サッカー連盟・タヴェッキオ会長に新たなスキャンダルが浮上~自著2万部を同連盟に10万ユーロで買い取らせる
昨夏、人種差別発言で世界中のサッカー関係者・ファンからヒンシュクを買ったイタリアサッカー連盟のカルロ・タヴェッキオ会長(71歳)に新たなスキャンダルが浮上した。会長就任前に出版した自著2万部を同連盟が購入するよう昨年11月に開かれた役員会で提案し、全会一致で10万7000ユーロ(約1300万円)を支出させたという。イタリア紙「イル・ファット・クオティディアーノ」が2月6日付紙面で特ダネとして報じたもので、他メディアも“後追い”している。
イタリアサッカー連盟が大金をはたいて“買い取った”のは、タヴェッキオ氏がイタリアアマチュアサッカーリーグ連盟会長時代の2011年に執筆・出版した『Ti racconto il calcio(君にサッカーを語ろう)』という子供向けの本。同氏が自身の孫に対して、イタリアのサッカーとアマチュアサッカー連盟の歴史を語るといった内容だ。
『ファット紙』のヴァレリア・パチェッリ記者がスクープしたところによると、昨年11月19日に開かれたイタリアサッカー連盟の役員会でタヴェッキオ会長は、「いくつかの州や県の委員会から、会員である若い選手たちにクリスマスプレゼントとして“ある”本を贈りたいとの要望が届いている。そこで出版社側に連絡をとったところ、1部11ユーロの定価を特別に5.38ユーロ(プラス消費税)で2万部供給してくれる確約を得た」と説明、連盟が買い取ることを提案したという。
「採択で“邪魔”が入らないように、彼は巧妙なカモフラージュを用意していた。そう、会長は本のタイトルは皆に明かしたが、著者の名前は告げなかったのだ。彼の目論見通り、役員会は会長の提案を『全会一致』で承認した。こうして彼の本は値引きされて連盟に買い取られ、著者(すなわち本人)にたくさんの施しをもたらしたのだ」とパチェッリ記者は記している。
タヴェッキオ氏はイタリアサッカー連盟の会長選期間中の昨年7月、「イタリアでは、それまでバナナを食べていた選手が突然セリエAでレギュラー選手になる」と発言、国際サッカー連盟(FIFA)から厳重注意を受けている。新会長となってからも、“取り巻き”であるラツィオ会長のクラウディオ・ロティート氏を常に帯同させて代表チームの試合や合宿を訪れ、代表選手やマスコミの反感を買うなど物議をかもしている。また、過去には不動産売買に絡んだ違法行為をマスコミに取り上げられるなど、極めて“ダ-ティ”なイメージが漂う人物である。
今回の「自著買い取り」疑惑に関してコメントを求めた『ファット紙』に対して、タヴェッキオ氏からの回答はなかったという。
連盟アドバイザーとして役員会にも参加しているロティート氏は、パチェッリ記者の質問に対し、最初「同役員会に参席したか?記憶にないな」などとはぐらかした後、ようやく重い口を開き「イタリアサッカー連盟の地方組織は20もあり、70万人もの会員(選手)がいる。会員数を考えて(2万部の)本が供給された。連盟には若い世代にサッカーを普及させる使命がある。教育的なこの本を配ることの何がスキャンダルなんだ? それにこの本は、とても評価が高い。これまで14万部も売れているんだ。今回の件は、会長が無償でやったこと。彼は1ユーロたりともお金(印税)は受け取っていない」と反論した。
だが、コリエレ・デッラ・セーラ紙の後追い記事によれば、タヴェッキオ氏は同書の出版当初から連盟に買取を持ちかけていたが、「敵対者」である前会長のアベーテ氏によって阻止されていたという。
パチェッリ記者は「本が発売された当時、アマチュアサッカー連盟のある州委員会のHPで『タヴェッキオ氏のこの素晴らしい著書の成功はとどまるところを知らない』と賛美されていた。おそらく、そうした成功がちょっと停滞したので、イタリアサッカー連盟が救済に入ったのだろう。それにしても同役員会では、一方でイタリアオリンピック委員会が(同連盟など)傘下の各連盟に総額で年間2000万ユーロの経費削減を求めた規約を承認している。今回の問題はこれで収束に向かうのか?いや、そうではない。全くもって未解決である」と連盟側の姿勢を糾弾している。