一難去ってまた一難:ACミランにサンシーロ競技場からの「立ち退き命令」が下る?

2014年01月31日 23:55

アッレーグリからセードルフへの監督交代と本田圭佑ら新戦力の加入で心機一転、名門復活を目指すACミランに、いま再び危機が訪れている。というのも、ミラノ市議会が現在立案中の「スポーツ道徳規範」に従って、同クラブがホームスタジアムであるサンシーロ競技場からの“立ち退き”を命じられるおそれが出てきたというのだ。コリエレ・デッラ・セーラ紙が伝えている。

ミラノ市では「スポーツの世界に犯罪が浸入するのを防ぎ、スポーツの社会的価値を向上させる」ために、「スポーツ道徳規範」の策定を進めている。目下、市議会のアンチマフィア委員会とスポーツ委員会が中心となって草案を練っている最中だが、原案によると、禁錮2年以上の有罪判決が確定した者、また、公職停止処分を受けた者がスポーツ団体・組織の経営や管理に携わることを禁じる項目が盛り込まれているという。

そこで浮上したのが、元首相でミランのオーナー兼会長であるシルヴィオ・ベルルスコーニの“取り扱い”である。ベルルスコーニは自らが所有する大手メディアグループ「メディアセット」に絡む脱税事件で実刑が確定(禁錮4年=恩赦法により1年に減刑)し、さらに昨年11月には国会から追放された。サンシーロ競技場はミラノ市の所有物であるため、新条例として発効されれば、「ベルルスコーニのACミラン」は同スタジアムを使用できなくなってしまう。

ところが、もしミランがサンシーロから“締め出し”を食らったならば、それに対する反動は計り知れない。宿敵インテルと市を二分する勢力であるだけに、ティフォージは決して黙ってはいない。市内各所で暴動が起こるのは必至だ。

マフィアや犯罪集団の締め出しを宣言する「道徳規範」は、いまやスポーツ界にも不可欠である。とはいえ「栄光のミラン」に泥をかけるような真似はしたくない。まさに袋小路に入り込んでしまった状態だ。そして、こうした現状を打破するためには、ピサピア市長が仲介に乗り出すしかない、というのがコリエレ・デッラ・セーラ紙の見方である。

憶測として流れているのが、同クラブの公式サイトに記されているベルルスコーニの肩書きを「会長」から「名誉会長」に変えて、クラブを厳しい規範から救済するという“奥の手”である。また、同規範を義務的・強制的なものとはせずに、クラブ側に適用するしないの判断をゆだねるという緩和措置も検討されているという。

それにしても恐るべきはベルルスコーニの影響力である。

先日も中道左派与党である民主党のレンツィ書記長と会談し、大政党に有利な選挙制度改革の実施で合意するなど、彼の政治力はいまだ健在だ。

果たしてミラノ市がその崇高なスポーツ理念を優先させるのか、それとも、またもやベルルスコーニのせいで骨抜きにされてしまうのか。市民たちもその行方を見守っている。