ヴェネツィア市が観光客のスーツケースの「車輪騒音」に対して罰金を検討
「水の都」ヴェネツィアで、観光客らが転がすスーツケースのゴロゴロという騒音に対し、最高500ユーロ(約7万3000円)の罰金を科すことを市当局が検討している。ANSA通信社、コリエレ・デッラ・セーラ紙などイタリアの各メディアが伝えている。
ヴェネツィアを訪れる観光客は年間約2700万人にも上る。中心街の石畳の路地はかなり狭く、彼らが昼夜を分かたず引きずるスーツケースの音に地元住民たちの我慢はいまや限界に達している。また、こうした車輪は運河にかかる橋などの石畳を傷め、その修繕に巨額の費用がかかるという弊害も生んでいる。
こうした「車輪問題」を受けて市行政委員のヴィットリオ・ザッパロルト氏が、スーツケースなどの車輪が空気入りの“無音”キャスターでない場合、使用者に100~500ユーロの罰金を科す条例を制定し、来年5月をメドに施行するよう提案書を出した。条例化の是非についてこれから本格的に審議が行われるが、規制対象は観光客のスーツケースだけではなく、市内の事業所や住民に荷物を配送する際に運送業者が使う台車も含まれている。さらに、公平さを求めて地元住民も処罰の対象とすることを望む関係者も多い。
「無音キャスター」の導入は確かに、同市が現在抱える「近隣住民への騒音」と「歴史的路地の保護」という二大問題を一挙に解決する名案には違いないが、伊メディアの間からは「現実上、条例化は無理」との声が出ている。
自動車の進入が禁じられているヴェネツィアの中心街における陸上交通手段は徒歩のみ。現在、空気入りタイヤやサスペンション付きなどのクッションの効いたスーツケースはイタリア国内外の市場では皆無に近い。結局、スーツケースを持ち上げて運ばなければならないが、子供や高齢者や障がいを持つ人には無理な話だ。また地元住民にとっても、規制対象となるカートは今や日常の買い物に欠かせない道具である。そして、警官たちがすべての通行者に目を光らせて監視するということも、まず不可能である。「優先順位として、警察にはほかにする仕事があるだろう」とコリエレ・デッラ・セーラ紙は指摘する。
一方、海外からも不平不満が続出しており、さっそく《#trolleyisnotacrime》と皮肉が込められたハッシュタグが登場している。