ローマ教皇フランシスコがサン・ピエトロ大聖堂周辺に暮らすホームレス150人をシスティーナ礼拝堂に招待:「あなた方の家にようこそ。この門は、常にすべての人に対して開かれています」と1人1人と握手し祝福
ローマ教皇フランシスコが26日、サン・ピエトロ大聖堂周辺に暮らすホームレス150人をバチカン美術館に招待、システィーナ礼拝堂でミケランジェロの天井画をともに眺めながら20分以上にわたって歓談した。コリエレ・デッラ・セーラ紙、ラ・レプッブリカ紙などが伝えている。
この“粋な見学ツアー”は、教皇庁の施物分配担当を務める“コッラード神父”ことコンラッド・クラジェウスキ大司教(51歳)のひらめきで生まれた。コッラード神父は常日頃、大聖堂周辺で野宿している貧困者たちのもとを個人的に巡回しては、毛布などの生活必需品を配布しているが、「人はパンだけでは生きられない。ホームレスたちにも、いやホームレスだからこそ、バチカン美術館に所蔵されている人間性に関する全ての美を享受すべきである」との想いを教皇に打ち明け、教皇も大歓迎した。
「2015年3月26日、木曜日、バチカン美術館、システィーナ礼拝堂見学、午後3時15分集合」
コッラード神父が配ったお手製のカードを見て集まったのは150人。閉館時間をいつもより早めて一般入場客を“シャトアウト”し、招待客専用となった見学コースを彼らは3班に分かれ、それぞれ担当ガイドの説明をイヤホンで聴きながら進んで行く。
「驚き」はシスティーナ礼拝堂で待っていた。ミケランジェロの『最後の審判』に見とれていると、突然姿を現したのは何と教皇本人。唖然とする彼らの前に歩み寄ると、教皇は「ようこそおこしくださいました。ここはあなた方の家です。この門は常にすべての人に開かれているのです」と挨拶。今回の訪問を企画したコッラード神父に感謝の意を表すると、「お願いします。私のために祈ってください。私はあなた方のような人たちの祈りを必要としているのです」と呼びかけ、祝福を与えた後、1人1人の手を握り20分以上にわたって歓談したのだった。
招待客らは美術館見学後、館内のレストランでディナーをしながらコッラード神父と懇談した。
彼らのまなざしは輝いたままだ。
マッシミリアーノは言う。
「実際、我々は教皇のために毎日祈っています。路上で暮らしていても、我々は常にサント・パードレと暮らしているんです。彼は貧しい者たちを怖がったりはしません」
続いてマウロが言った。
「彼が隣にいたなんて、いまだに信じられません。『最後の審判』をながめていたんです。イヤホンで説明を聴きながら。その時突然、ガイドの音声が止まった。すると教皇が近寄ってきたんです。手を頭に置いて、私たちを祝福したのです。私はあなた方を愛します、彼は繰り返して言いました」
そして、古ぼけた携帯電話で“至福”のメニューをカシャカシャと撮った。モッツァレラ、プロシュット、ピッツァ、ポルケッタ、ライスコロッケ……。
「美術館内には、ヨハネ・パウロ2世が銃撃された際の教皇専用車までもが置いてあった。素敵な廊下、ラファエロのフレスコ画、システィーナ礼拝堂……。すべてが美しすぎて、言葉も出ません。これまで50年間この世に生きてきて、教皇の近くにいるなんて考えたこともなかった。まして、その手を握ることなど……」
なお、今回のホームレスらとの面談に関しては、教皇はあくまでプライベートなものであることを望んだ。このため公式のビデオや写真は撮影されなかった。彼らの人権もきちんと配慮した、いかにも庶民派教皇らしい計らいであった。