「古代ローマ以来の伝統を捨てて、安易な英語至上主義に走った」~ローマ市の新しい紋章が市民らから不評、政治問題化の動きも

2015年02月13日 17:30

2月10日に公表されたローマ市の新しいロゴマーク(紋章)が多くの市民の不評を買っている。中道左派政権であるイニャツィオ・マリーノ市長“お気に入り”の同デザインに対して、対抗勢力である中道右派の国会議員や市議たちは猛反発しており、今後政治問題化しそうな気配だ。コリエレ・デッラ・セーラ紙電子版が報じている。

ローマ市はこれまで長年にわたりローマ帝国の伝統を受け継ぐ「盾形」の紋章を用いてきた。赤色の本体に金色の装飾が付いた盾の中に《SPQR》との文字が記されたもので、《SPQR》はラテン語《Senatus Populusque Romanus》の略で、訳して「元老院とローマの人民たち」~すなわち、古代ローマの国家全体の主権者を指す。同表記はローマ帝国が滅びた後もローマのシンボルとして使用され続け、現在でも市バスや地下鉄、タクシーの車体からマンホールのフタにまで記され、市民たちに愛されている。

その「伝統のシンプルデザイン」を一気に消し去ったのが、革新派のマリーノ市長。市長自らプレゼンテーションした新たな紋章からは「盾」が消え、その代わりに、どう見ても“足跡”としか思えない模様が‥‥。唯一変わらないのは赤色だが、“足指”にあたる5個の玉模様は黄色とオレンジ色。そして《SPQR》の表記が消え《ROME &YOU》との英語が記されている。

この「革新的すぎる」デザインに対する市民たちの心境は、コリエレ・デッラ・セーラ紙が電子版で行った緊急アンケート調査の結果に凝縮されている。

「新しいロゴが好きか?」との質問に対して、何と89.9%が「No」と回答。

「前のロゴの方がよかった?」には84.7%が「Si(Yes)」と答えたのだ。

さっそく、中道右派の議員たちによるマリーノ市長への攻撃が始まった。

「イタリアの兄弟=国民同盟」の代表であるジョルジャ・メローニ議員は自身のフェイスブックでこう憤慨した。

「ローマ市を国際的に宣伝しようというマリーノ市長の新作戦は、まったくもって馬鹿げている。何千年にもわたる歴史と文化を誇るローマのアイデンティティーを世界中に伝える動きを強化すべき時に、市長は真逆のことをした。『永遠の都』のアイデンティティーを、理に合わない英語の慣用句によって薄めることを選んだのだ。その結果、新しいロゴはカーニバルにお似合いのものになってしまった」

さらに、同党の下院議員団代表のファビオ・ランペッリ氏は「まさに田舎者の外国崇拝だ。彼の悪趣味は、クリスマスシーズンのコルソ大通りを台無しにする、世界中で流行中のあのゾッとするイルミネーションに完璧に相通ずる」。そして、同党のローマ市議団代表のファブリツィオ・ゲーラ氏は「この新しいロゴに一体いくらのお金がかかったんだろう?」と揶揄する。

ソーシャル・ネットーワーク上では、「新デザインは現代性に富む」として市長に賛同する人も数多くいるものの、「2024年ローマ五輪」招致運動に向けて今後の動きが気になるところだ。

上がローマ市の旧紋章

新しい紋章はコリエレ紙電子版でご覧ください。↓

https://roma.corriere.it/foto-gallery/cronaca/15_febbraio_10/nuovo-logo-roma-capitale-a4a87cca-b15b-11e4-9c01-b887ba5f55e9.shtml?fromArticle=true

https://roma.corriere.it/notizie/cronaca/15_febbraio_11/roma-nuovo-logo-fa-discutere-diventa-subito-caso-politico-4dc364ce-b21e-11e4-bc1b-1ae1969d3e69.shtml