ローマ・フィウミチーノ空港の滑走路上が"トランクの山"と化す異常事態に~アリタリア航空の荷物運搬人たちのストライキで、1万4000個の機内預け荷物が放置されたまま搭乗客のもとに届かず

2014年08月08日 11:33

イタリア旅行の際にまず心配するのが、機内預け荷物の紛失や盗難といったアクシデント。昨年5月、アリタリア航空の社員らがフィウミチーノ空港など主要空港で乗客のスーツケースのカギを壊し、組織的に盗みを繰り返していたとして86人が逮捕された事件は、まだ記憶に新しいところだ。ところが、またもやフィウミチーノ空港を舞台に、アリタリア航空社員のとんでもない行動が旅行客らに大損害と大混乱を巻き起こしている。機内預け荷物の運搬係の集団ストライキにより、1万4000個もの荷物の積み込み作業がストップし、滑走路上に放置される異常事態が続いているのだ。

コリエレ・デッラ・セーラ紙の報道によると、ストライキが始まったのは8月3日(日曜)の夜。"ポーター"たちの職場放棄により、これまで100便以上の旅客機が貨物室が空のまま飛び立っている。同紙のニュースサイト上では、灼熱の太陽のもと数百ものカートがバカンスへ向かう乗客らの旅行カバンを満載した状態で、格納庫前に並んでいる光景を撮影したアマチュアカメラマンのビデオ映像が公開されている。

今回のストライキの発端となったのは、経営再建中のアリタリア航空がエティハド航空(UAE)の支援を受けるために大規模な人員削減策を受け入れたことだ。6月25日、エティハド航空はアリタリア航空に49%出資することで合意したと発表したが、協定締結の条件としてアリタリア側に2250人もの社員の一時解雇を求めている。これに反発したアリタリア労組側が「順法闘争」に打って出た形だ。緊急集会に集まった200人の作業員は、次のように抗議行動の動機を説明する。「飛行機や乗客らの安全は我々の手にかかっている。それなのに、会社側は俺たちの首を切ろうとしている。合理化によって一番被害を受けるのが我々のセクションであり、残った者も毎日それまでの4人分の仕事量をこなさなければならなくなる」

それにしても時期が最悪だった。バカンスシーズンに突入した、その矢先でのストライキ突入である。

"思わぬとばっちり"を受けた旅行客たちは怒り心頭だ。バカンスで妻とシチリアへ向かったある乗客はこう吐き捨てた。「シチリアに着いて荷物がまだ届いていないことを知った。紛失届け出を出すために、我々は2時間以上も並んで待たなければならなかった。やつらにバカンスを台無しにされた。まさにイタリアの恥だ!」

乗客たちへの被害を最小限に抑えるために、アリタリア本社側も必死だ。フィウミチーノ空港職員らの応援も受けて特別部隊を投入し、1万4000個の荷物の配送作業に奮闘しているが、すべての荷物を処理するのには、最低でもあと10日はかかると見られている。つまり、多くの観光客は旅行カバンなしでバカンスを過ごし、帰宅したころにようやく"再会"することになる。