レンツィとメルケル、伊独の両首脳がミケランジェロのダビデ像の下で共同記者会見
マッテオ・レンツィ、アンゲラ・メルケル両首相による伊独首脳会談が22日にフィレンツェで開催された。会談後、両首相が揃って記者会見した場所は何と、アカデミア美術館内のダビデ像(ミケランジェロ作)の真下。レンツィ首相発案の“粋な演出”を、コリエレ・デッラ・セーラ、ラ・レプッブリカなどイタリア各紙が報じている。
ダビデ像は1500年代初頭に制作された、ミケランジェロの(というよりも世界の美術史における)代表作。大理石製で身の丈5.17m。元来はフィレンツェ市庁舎の置かれたヴェッキオ宮の前に飾られていたが、現在はアカデミア美術館のホール中央に置かれている。
今回の首脳会談のメーンテーマは、イタリアが抱える財政赤字問題。ドイツをはじめEU加盟国の大半がイタリアに赤字縮小へのさらなる努力を求め、メルケル首相との会談でも強い圧力がかかると予想される中、“懐柔策”としてレンツィ首相が選んだ開催地が、生まれ故郷のフィレンツェ、さらに共同記者会見場をダビデ像の真下にするという異例の試みだった。
「フィレンツェを選んだのは、ここがイタリアの美しさを象徴する地だから。そしてダビデ像は欧州が目指すべき理想の姿、すなわち、欧州は全世界が憧れる美、そして理想でなくてはならない」
「ミケランジェロは大理石を余分なところまで削り取ることによって、この傑作を生みだした。イタリアもヨーロッパも、彼のようにしなければならない。改革者の進路を阻もうとするすべてのものを取り除いて。イタリアとドイツは力を合わせてヨーロッパを変えていかなければならない」
--記者会見でレンツィ首相は誇らしげにこう言い放った。
レンツィ首相の「おもてなし」はヴェッキオ宮内で催された晩餐会の後も発揮された。
フィレンツェ大学卒業、そしてフィレンツェ県知事、フィレンツェ市長を歴任するなど、ルネッサンス発祥の地を熟知している同首相は、アカデミア美術館、ウフィツィ美術館などを案内。自らが企画した2時間にわたる“観光ツアー”でメルケル首相を魅了した。
中でもメルケル首相が心を奪われたのは『ヴァザーリの回廊』。ウフィツィ美術館とピッティ宮殿を繋ぐ約1kmの“秘密の通路”を散歩中、イルミネーションに浮かび上がったサンタ・フェリチタ教会の夜景に思わず「まるで奇跡だわ」と放心状態。
「ご覧、アンジェラ(メルケル首相の名前のイタリア語読み)! フィレンツェの芸術は何て美しいんだろう。ローマどころではないよ。イタリアの真の都はフィレンツェさ」とレンツィ首相もご満悦だった。