モデナ市中心街の教会から、市場価値にして500万~600万ユーロ(約7~8億円)相当の17世紀の名画が盗まれる
「世界遺産の町」モデナの中心部にある教会から、500万~600万ユーロ(約7~8億円)の市場価値があるといわれる祭壇画が忽然と姿を消し、警察が盗難事件として行方を追っている。コリエレ・デッラ・セーラ紙、ラ・レプッブリカ紙など各メディアが報じている。
各紙の報道によると、8月13日午後1時ごろ、カナルグランデ通り沿いのサン・ヴィンチェンツォ教会の教区司祭が、同教会が所蔵する絵画「Madonna con i santi Giovanni Evangelista e Gregorio Taumaturgo」が持ち去られたことに気づき、警察に通報した。
この絵画はバロック期のイタリアを代表する画家の1人、グエルチーノが1639年に描いた祭壇画。正装した聖グレゴリオが描かれた、たて約3m×よこ約2mの壮大な作品。7月上旬にトリノのヴェナリア王宮で開催された展覧会に出展されていた。
警察の調べによると、犯行時間は12日夜で、犯人は複数で閉館前から教会内に隠れていたものと見られる。教会の表門にこじ開けられた跡はなく、現在のところ犯人に結び付く証拠は見つかっていない。外国人グループによるプロの窃盗団の仕業と見られる。
モデナ市では最近、教会など礼拝施設を狙った窃盗事件が頻発しており、各教会側も保安対策を強化していたという。ただ、これまでに被害を受けた教会は郊外の人気のない場所にあり、持ち去られた物も、聖杯、燭台、ミサ用の聖具一式などで、絵画も含めて市場価値の高くないものばかりだった。ところが、今回は犯行現場が市中心部、しかも警察署から目と鼻の距離という大胆な犯行。そして盗まれたのがバロック期を代表する名画とあって、教会関係者や行政当局が受けた衝撃は大きい。モデナ市長のジャンカルロ・ムッツァレッリ氏も「サン・ヴィンチェンツォ教会のみならず、モデナ市全体に損害をもたらすものだ」とショックを隠せない。
そして問題視されているのは、同教会内にアラーム等のセキュリティシステムがなかった点。イタリアにおける美術評論の第一人者、ヴィットリオ・ズガルビ氏は「事件解決に向けて国も介入すべきだ。一体なぜ、文化財保護局はこれほど貴重な作品をこのような教会に置くことを許可したのか」と文化財保護行政を糾弾する。
現実問題として、盗み出された作品が市場で売買される可能性はゼロに近いと見られている。警察側もズガルビ氏も、犯人側は"身代金"(同作品の買戻し)が目当てではないかと見ている。
(同絵画はラ・レプッブリカ紙のウェブサイト上でご覧になれます)
https://bologna.repubblica.it/cronaca/2014/08/13/foto/guercino-93717633/1/#1