イタリア国歌は『命の賛歌』~ミラノ万博開会式でイタリア国歌の歌詞が一部アレンジされて歌われる~「我々には死ぬ覚悟がある」が「我々には生きる覚悟がある」に

2015年05月02日 22:02

史上初めて「食」をテーマにした国際博覧会『ミラノ万博』が1日開幕したが、開会式でイタリア国歌の歌詞が一部アレンジされて歌われる一幕があり、その是非について論争が起きている。コリエレ・デッラ・セーラ紙などイタリア各紙が報じている。

イタリア国歌は、作詞者にちなんで『マメーリの賛歌』とも呼ばれる。まだイタリアが国家として統一される前の1847年、愛国者の学生、ゴッフレード・マメーリによって作詞され、ミケーレ・ノヴァーロが曲を付け、ジュゼッペ・ヴェルディが編曲した。国歌となったのは第二次世界大戦後の1946年、イタリアが王政から共和制に移行した年である。

制作当時の時代背景からマメーリの詩は極めて軍歌調であるが、ミラノ万博のオープニングセレモニー、子供たちと大人たちによる"四重唱"の中で、曲のクライマックス~サビの部分の《Siamo pronti alla morte》(我々は死ぬ覚悟ができている)が、《Siamo pronti alla vita》(我々は生きる覚悟ができている)に変わったのだ。

開会式の模様は国営テレビRAIで生中継されており、この"突然"の歌詞変更は、国民の論議を呼ぶことになった。

歌詞の変更は、コーラスを指揮したミラノ在住の音楽家、ステファノ・バルザン氏(51歳)の発案、というよりも、彼の妻のアイデアであった。

その経緯をバルザン氏は次のように説明する。

「我々は10日間にわたってリハーサルをした。でも“Siamo pronti alla morte”のフレーズのところで、どうしても子供たちの口が調和しないんだ。家で妻にこの話をしたら、彼女が歌詞の修正を提案してきたんだ。『Morte(死)のかわりにVita(生)よ !』とね。さっそく開会式の責任者とディレクターに提案した。彼らも感激していたよ。関係各庁に届け出て、すぐにOKが出たんだ」

すなわち、歌詞の変更はレンツィ首相も事前に了承済みだったのだ。

事実、同合唱に引き続いて挨拶に立ったレンツィ首相は、スピーチの冒頭で、アレンジされた歌詞を引用し、こう宣言した。

「そう、私たちは生きる覚悟ができています。そして、ようこそお越しくださいました、と言う用意も」

今回の件では、「国歌の歌詞を、それも世界的なセレモニーの場で改ざんするとは何たる不謹慎」との苦情や異議が届いているという。

でも……本当の「愛国心」とは何なのだろうか……。

万博開幕直前には、ネパールで大地震が発生し、現時点で7000人もの死者が出ている。その少し前には、リビア沖の地中海で難民船が転覆して

700人以上の人が亡くなっている。

このような背景・状況の中で、子供たちにやみくもに「死への覚悟」を誓わせる、というのは酷なことであろう。

バルザン氏は言う。

「これは『マメーリの賛歌』を変質させたものではありません。『マメーリの賛歌』の第二部、そう『命の賛歌』なのです」

レンツィ首相夫人のアニェーゼ・ランディーニさんが、最後、子供たちの歌声に感極まって、何度も何度も手で涙をぬぐう姿が印象的だった。

https://milano.corriere.it/notizie/cronaca/15_maggio_01/expo-inno-mameli-modificato-direttore-spiega-renzi-sapeva-5c0aa950-f023-11e4-ab0f-6f7d8bd494ab.shtml

https://www.youtube.com/watch?v=t60Gpb6YAdk