ミラノ・スカラ座のシーズンが12月7日(聖アンブロシウスの日)に開幕

2013年12月08日 15:00

「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」は、1853年ヴェネツィアで初演されたが、ヴェルディの斬新で現代的な作風が聴衆に理解されず失敗に終わったと言われている。(高級娼婦ヴィオレッタが太り過ぎていて肺結核で死ぬヒロインに見えなかったという説もある)。

若きデュマ・フィスによる原作「椿姫」は戯曲となって大成功を収めたが、その芝居をパリで観たヴェルディが感激して書き上げた傑作である。

さて、その「ラ・トラヴィアータ(イタリア語で“道を踏み外したオンナ”という意味)」が、2013/2014シーズンのスカラ座の開幕として、ミラノ守護聖人アンブロシウスの日である12月7日に上演された。

12月6日付コリエレ・デッラ・セーラ紙によると、初演が失敗に終わったためにのちにヴェルディが手を加えて書き換えたものが後世に残っていたが、今回の上演では初演時のオリジナル部分が復活されることになるという。

「ヴィオレッタは、権力の犠牲者なんだ。私は、普通の人生を送りたいという彼女の願望を表現したい」と指揮者ダニエル・ガッティ氏は語る。父ジェルモンの存在だけでなく、ヴィオレッタと恋人アルフレードの間には、社会的束縛や価値観の相違があったというのだ。

ところで、「ラ・トラヴィアータ」という作品もまた実に運命的であったといえよう。ヴィオレッタの歌唱でもっとも胸を打つのが、マリア・カラス。1955年のミラノ・スカラ座での、ルキノ・ヴィスコンティ演出は大反響を呼んだ。指揮者ジュリーニという豪華メンバーである。一方、1964年にカラヤン指揮、ソプラノのミレッラ・フレーニによる上演は失敗に終わり、以来、スカラ座では「ラ・トラヴィアータ」は1992年のリカルド・ムーティの指揮による上演まで封印されたという。

余談だが、1981年に制作されたマウロ・ボロニーニ監督の映画「椿姫の真実の物語」は見応えのある作品であった。主演はフランスの女優イザベル・ユペール。彼女の優れた演技もさることながら、美しい舞台衣装も堪能できる作品である。