フェラーリを乗り回す“奨学生”

2013年12月03日 15:36

イタリアの大学生にとって、毎年この時期はハラハラ、ドキドキの季節。9月に申請したborsa di studio(奨学金)受給者選考の結果が発表されるのだ。

日本の学生と違ってアルバイトをほとんどしない彼らにとって、奨学生制度はまさに「天の恵み」。授業料免除、寮費無料、学食や交通費の補助などで、最高で日本円に換算して年100万円ほどの援助額となる。しかも、返済する必要はない。

申請手順も比較的簡単だ。同一世帯の家族の所得・資産の総額、2年生以上は前年度の取得単位数と試験の点数が記された証明書を、各州の奨学金事務所に提出(自己による証明)、それに従って「受給候補者順位表」が作られる。そして州が毎年定める支給総額に沿って最終合格者が決められる。

財源は国民の税金。近年は財政難から資格審査が厳しくなっており、それに伴って「不正受給者」の実態も次々と明らかになっている。

全国紙コリエレ・デッラ・セーラ(電子版)のオピニオン欄で、アルド・グラッソ記者が“怒り”の記事を書いている。

同記事によると、ローマ市内のプール付きのお屋敷に暮らす●●さんも奨学生。お父さんの所有するフェラーリで国立ローマ第三大学に通うお嬢様なのにだ。彼女が申告した家族の年収はたったの1万8801ユーロ(約260万円)。彼女の同級生もすごい。銀行預金60万ユーロ(約8400万円)を申告せず、1万4000ユーロ(約200万円)の年収のみで奨学生となっていた。

これらは、今年イタリア財務警察が摘発したローマの3大学に在籍する学生の不正行為340件のうち、たった2例にすぎない。

グラッソ記者は「主たる責任は親、そして国(の支給制度)そのものにあるが、こうした悪徳学生のせいで、正直な学生たち、本当に援助を必要としている勤勉で真面目な学生たちが被害を受けている。最高学府までたどりついた者が、公民としてのモラルを身につけていない。この国の教育は一体どうなっているのか」と嘆いている。