パルマ近郊に今秋、世界に類を見ない「エコロジー村」が誕生
美食の都として知られ、パルミジャーノ・レッジャーノ、プロシュット・ディ・パルマの産地として有名なパルマに今秋、農作物の地産地消、エネルギーの自給自足、資源リサイクルを目指した「エコロジー村」が誕生する。名付けて《Agrivillaggio(アグリヴィッラッジョ)》。コリエレ・デッラ・セーラ紙が報じている。
パルマ市中心部から8キロ、緑豊かな平原が広がるヴィコフェルティーレ村。今年9月、村内の28ヘクタールの区画に60戸の住宅が完成、総勢240人の家族が暮らし始める予定だ。
プロジェクトリーダーのジョヴァンニ・レオーニ氏(52)によれば、平屋建ての各戸にはルーフ付きの菜園用テラスが付属しており、その面積は住民の好みやニーズに応じて調整できる。“旬の作物”を中心に1000人ほどの供給量を生産し、余剰分は村外で販売。村内には太陽光発電システムが張り巡らされており、光熱費は低く抑えられている。下水道はなく、廃棄物は植物浄化によって肥料やバイオマス発電に姿を変える。こうした自然エネルギーは夜間照明などにも利用される。住民の交通手段は、徒歩、自転車、そして電気自動車だ。
レオーニ氏は「アグリヴィッラッジョ」のポリシーについて次のように語る。
「これは決して"中世への回帰"などではないし、"隠遁生活のススメ"でもない。食料供給・居住の可能性、社会とのつながりという観点から“未来を考える”ことである。つまり、これまでの"メガロポリスの巨大ベッドタウン"に取って代わる新たな都市モデルであり、環境にやさしく、無駄のない暮らしを追求するものだ」
この世界に類を見ないエコビレッジは、レオーニ氏の長年の夢であり、この10年間、彼は夢の実現に向け心血を注いできた。彼は年間1500個のパルミジャーノ・レッジャーノ、1万個の玉葱、2200トンのトマトを生産する同村きっての敏腕農場経営者である。だが、それだけでは満足せず、アルゼンチンからオーストラリアまで世界中の様々な実験的農業や中高生を対象とした実習農園について研究。さらに都市工学面では、建築家フランク・ロイド・ライトの「生きている都市」(1958年)に着想を得て、エコロジストのロブ・ホプキンス、アイルランドや英国で建設された「トランジション・タウン」にも感化されたという。未来における農業を「現在とは異なり、“消費者の顔”を見ながら、各自が必要とするものから始めるもの」と定義し、それを「オンデマンド型農業」と呼ぶ。そして「自宅で仕事をできるようにしたり、各種サービスを充実させて、住民たちが多くの時間を彼らの子どもや高齢者のために捧げることができるようにしたい」と話す。
パルマでは2012年5月の市長選で、既存政党の批判を展開するコメディアンのベッペ・グリッロ氏が率いる「五つ星運動(Movimento Cinque Stelle)」から立候補したフェデリコ・ピッツァロッティ氏が勝利を収めた。新市長が推進する改革の柱が都市計画であり、「アグリヴィッラッジョ」にも大きな関心を持ち、支援を約束しているという。さらに、2015年に開催されるミラノ万博は、そのテーマが「地球に食料を、生命にエネルギーを」と、まさにレオーニ氏のポリシーと重なる。こうした追い風を受けて、レオーニ氏は「パルマ発のエコロジー村」を世界に強くアピールしていく構えだ。