パドヴァ屈指の観光名所・スクロヴェーニ礼拝堂に落雷があり、ファサード部分が損傷~礼拝堂内にあるジョットの一連の名画は無傷と見られる

2014年08月29日 17:45

「西洋絵画の父」と謳われるジョットの作品の中でも代表作といわれる、聖母マリアとイエス・キリストの生涯を描いた一連のフレスコ画が所蔵されていることで有名なスクロヴェーニ礼拝堂。同礼拝堂がこのほど落雷の直撃を受け、ファサード外壁の十字架が大破していたことが26日、パドヴァ市観光協会が出した声明でわかった。いまのところ、ジェットの装飾画に被害は見受けられないという。コリエレ・デッラ・セーラ紙などが報じている。

同観光協会によると、落雷があった日は特定されておらず、2週間ほど前と見られる。雷は1300年代に建てられた礼拝堂のファサードの上にある球状の台座に落ち、十字架が大破した。現在、十字架は撤去されている。目下、建物内部に損傷があるかどうか精査中だが、幸いなところ、いまのところジョットの名画に被害はない模様。

「まったくもって非常識、あきれ返ってしまう出来事だ」と今回の“事故”を断罪するのは、ジョット専門家であり同市の元・文化担当市議であるジュリアーノ・ピサーニ教授だ。

ピサーニ教授が腹を立てているのは、今回の礼拝堂の“瓦壊”が行政側から公表されたのではなく、観光協会からの声明で初めてわかったこと。

「スクロヴェーニ礼拝堂は“そんじょそこらにある”建物ではない。ジョットのフレスコ画という世界的遺産を飾っている歴史的礼拝堂だ。市が発表しないというのはありえない!」

さらに、同教授は行政側の落雷対策が完全ではなかった点も指摘している。というのも、実は数年前にもパドヴァでは今回と同様の落雷事故があり、サン・フランチェスコ教会の十字架が崩壊しているのだ。

「スクロヴェーニ礼拝堂には避雷針が備え付けられていたが、それだけでは十分ではなかった。同礼拝堂の保存状態について、文化財の最高専門家らによる会合を開くよう、これまで私は求めてきた。1960年代に行われたセメントによる補強工事によって建物の構造から柔軟性が失われる結果となった」

このところ頻発する名画の盗難事件に加えて、歴史的建造物の崩壊事故も各所で相次ぐなど、イタリアの文化財行政には難題が山積している。

《スクロヴェーニ礼拝堂とジョットのフレスコ画》

スクロヴェーニ礼拝堂は銀行業(高利貸し)で財産を築いた一族出身のエンリコ・デッリ・スクロヴェーニが、一族や自らの贖罪のために私財を投じて建設したといわれる。礼拝堂内の壁は1305年に完成したジョットの一連のフレスコ画で飾られている。同壁画は、聖母マリアとイエス・キリストの生涯を描いたもので、「受胎告知」「キリスト誕生」「キリスト受難」「キリスト復活」「聖霊降臨」などから構成される。その卓越した感情表現や立体的な人物像、自然な空間描写などから、初期ルネサンス絵画の中でも最高傑作のひとつといわれている。

詳しくは、同礼拝堂HPでご覧ください。

https://www.cappelladegliscrovegni.it/