ナポリの裁判所で弁護士らが暴動を起こす~金属探知器を使った入場チェックで生じた長蛇の列に激怒、入り口のガラス戸を突き破り、警官6人が負傷
ナポリの地方裁判所で14日、金属探知器を使った入館者のチェックによって生じた長蛇の列と待ち時間の長さに腹を立てた弁護士らが、入り口のガラス戸を集団で打ち破り、警備の警察官6人が負傷する大混乱が起きた。「コリエレ・デッラ・セーラ」や「ラ・レプッブリカ」などイタリア各紙が伝えている。
イタリアでは今月9日にミラノの地方裁判所内で、破産詐欺を巡る訴訟の被告の男が裁判中、隠し持っていた拳銃を取り出して発砲し、判事ら3人が死亡する事件が起きた。
この事件を受けてナポリ地裁では、裁判所の建物内に入館する際の持ち物検査を厳しくすることを決め、13日より職員や弁護士、司法実習生らに対しても金属探知器による検査を行うことになった。
ところが--。配備された金属探知器はたった2台しかなく、そのうち1台は故障しており、警備員が入館者の鞄などの持ち物を開けて調べたり、タブレットやスマホなどもチェックの対象となったため、裁判所前には朝早くから入館を待つ長蛇の列が発生。すでに13日には混乱が発生し、弁護士たちが事態の改善を要請していたが、警備責任者からは何の回答もなかった。翌日の14日は、普段から公判や刑事審問・民事口頭弁論がたくさん入っている火曜日。案の定、午前9時には行列は敷地外の歩道まで延々と続き、待ち時間は3時間にも達した。慌てて携帯電話で依頼者や証人たちに連絡を取る弁護士たち。現場の怒りと緊張はついに沸点に達した。「我々は仕事をしなければならない。我々をすぐに入場させろ。恥を知れ、恥を!」と激高した弁護士らの一団が入り口のガラス戸を打ち破り、強行突破しようとした。警備の警官らが応戦し、現場は修羅場と化した。
割れたガラスの破片で警官6人が軽傷を負い病院で手当てを受けたほか、雑踏に押しつぶされそうになった女性弁護士1人が卒倒して救急車で運ばれた。
この大混乱を受けて、同裁判所の警備担当側は緊急会議を開き、対応策を協議。その結果、とりあえず新安全措置は中止し、弁護士や職員に対しては金属探知器によるチェックや持ち物検査は行わず、身分証の提示のみで入館を許可することにした。
その後、現場の混乱は徐々に解消に向かったが、裁判所前の公道は交通が遮断され、大量の制服警官が整列するなど異様な光景と空気が満ち、弁護士らは口々に「これは侮辱だ。まるで流刑囚のよう。彼らは我々の職業と司法を屈服させようとしている」と猛反発を見せ、その怒りはなかなか鎮まらなかった。