ザック監督が伊紙に本田のミランでの活躍に太鼓判
イタリアに一時帰国中のサッカー日本代表監督、アルベルト・ザッケローニ(エミリア=ロマーニャ州出身)がガゼッタ・デッロ・スポルト紙の単独インタビューに応じた。5日付紙面で1ページを割いて紹介されており、その中でACミランに移籍した本田圭佑に関して「ミランは良い買い物をした。カカ、バロテッリと一緒にプレーできる」とコメント、世界一"過酷"なリーグと言われるセリエAでの活躍に太鼓判を押した。記事の内容は以下の通り。
ふだんはポップスターのポーズを見せながら、ピッチ上ではプロフェッショナルに徹する。ケイスケ・ホンダは新たなナカタ~外見に気を配り、いつも濃いサングラスをかけて行動する。しかし、彼を見くびってはいけないとザッケローニ監督は言う。「私の中で彼はトッププレイヤーだ」と。
--ミランにとって良い買い物だった?
「もちろんだ。むしろ私は、彼がもっと早く欧州の主要リーグに行かなかったことに驚いている。おそらく"値札"の問題がネックになったのだろう。CSKAモスクワは彼を売る必要がなかったし、見ての通り、ミランにとってロシア人から彼を引き離すことは容易ではなかった」
--あなたにとって本田とは?
「体力、技術、耐久力に加えて個性も持ち合わせている。天性のmancino(左利き=レフティー)で、見事なシュート力を持っている。ペナルティーキックは素晴らしく、難しい低い位置へのゴールも決める。他の日本人とは違って型にはまらないタイプだ。彼が話す時はありきたりなことは言わない。personaggio(有力者、有名人)だ」
--なぜ、あなたは彼がミランにピッタリ合うと思うのか?
「それは彼が個性を持っているからだ。ミランでは、マラドーナのようなテクニックを持っていても、個性がなければ長くプレーすることはできない」
--アッレーグリ監督は本田はセンターハーフもできると言っているが。
「それは正しい。彼の“生まれ”はサイドバックと言う人たちもいるが、本当かどうかは知らない。ただ私が理解しているのは、日本人は多才であるということ。長友を見ればわかる。彼にとって右サイドがいいのか左サイドがいいのかは誰もわからない。長友は技術的に極めて優秀であり、(監督や同僚に)求められれば、すぐさま40m駆け上がったり下がったりすることができる。マッツァッリ監督は彼の持ち味をうまく活かしている。ところが、観衆たちはそんな彼の能力を見下しているところがある。私がサンシーロで観戦した時、彼は孤軍奮闘で走りまくっていた。でも、一度ボールの処理をミスしただけで、サポーターからかなり強いブーイングを浴びていた」
--日本人選手は、他の選手の倍の活躍をしなければ評価されない、と言いたいのか?
「日本人はちょっと過小評価されていると言いたい。彼らがイタリア人やブラジル人よりも優れている、と私は言っているんじゃない。もちろん、イタリア人やブラジル人はテクニック的には一番だが、ここ数年の成長度で言えば日本人の方が上だ。日本人には技術があり、集団プレーにおける規律性がある」
--あなたは、他の日本人監督やコーチにとって母親的な存在であり、だからこそ彼らとこんなにもうまくやっていけるのか?
「日本社会は我々の社会とは異なるが、多くの価値を持っている。1年10カ月日本に住んでいるが、暮らし心地は最高だよ」
--日本語は覚えたのか?
「必要最小限のものだけ。スタッフは皆イタリア人だし、協力者たちとは緊密な関係を築いている。たくさん日本語を話せるだけの自由時間もない。それに、とても優秀な通訳も付いているし…」
--日本はW杯で混戦グループに入ったが、チームに期待するものは?
「決勝トーナメントに進むこと。そして光彩を放つこと。私は日本代表をW杯に導くため、そしてプレーの質を向上させるために監督として呼ばれた。そして、これらの目標を達成した。加えて、アジア杯を獲得することもできた」
--日本の後にイタリア(代表)を率いるのか?
「それはわからない。今はまだ日本代表の監督だし、W杯のことだけに集中している。イタリアサッカー協会とは何の接触もない。また、W杯終了後に日本代表から離れるということを私が日本サッカー協会に告げた、という報道も正しくはない。今後のことは、しかるべき時が来たらよく考えて決めるよ。いつもしてきた通りにね。6カ月というのは短いようだが、多くのことが変わりうると思う」
--W杯前に本田がイタリアでプレーするというのは、あなたにとってアドバンテージとなるか?
「私の選手たちが偉大なプレーヤーらとしのぎを削ること、そしてより骨が折れる状況下で試合をするというのはアドバンテージになる。セリエAは世界で最も素晴らしい選手権ではないが、間違いなく最も過酷な選手権だ。日本人選手は戦術的にingenuita'(純真さ=狡猾さがない)であることを考えれば、本田にとってイタリアで(狡猾さを学ぶという意味で)さらに成長する好機となるだろう。香川がマンチェスター・ユナイテッドに移籍した際にも語ったように、本田にとってミラン入りはゴールではなく、スタート地点なのだ」
--その香川はあなたの最良の選手ですが。
「誰がそんなことを言ったのかは知らないが、本田は香川と同じくらいの力量を持ち、日本では皆が彼に夢中になっている。(香川よりも)いくつか年上だし、より成熟している。だから、ミランのために多大な貢献をするだろう」
--だから今回の“イタリア上陸”に際する大騒動にもあなたは驚かないのか?
「先ほども言ったが、本田は有名人なんだ。しかし、これは彼の技術的価値を忘れさせるものではない」
--彼はイタリアにうまく順応すると思うか?
「順応すると信じている。何人の親友を作れるかはわからない。ナポリ人のような長友と同じわけにはいかないが、プロサッカー選手という観点から言えば、うまく環境に溶け込むと思う」
--バロテッリの後ろにカカと本田を置くというのは良い解決策か?
「そうだ。先にも言ったように本田は多くのポジションでプレーできるが、彼にとって最良なのは明らかにトップ下だ。私の日本代表では3人の攻撃的選手とプレーしているが、ワントップ、ツートップの下でもプレーできる。典型的な、攻撃陣と中盤をつなぐ選手だ」
--本田がミランに来て、これからしばしばサンシーロに視察に来ることになるのか?
「見に来ることは可能だが、その必要はない。長友と本田のことは、完璧に知っている。それに、W杯に備えるためには、23人の選手枠のひとつを獲得しなければならないということを学んで欲しい。なぜならば、私のチームに絶対というものはないからだ。私の中の“ヒエラルキー”はすぐに変わりうるからね」