サッカーW杯:イタリア・イングランド戦、試合開始時刻の変更は「テレビの勝利」
来年6月12日に開幕するサッカーW杯ブラジル大会、イタリアにとって初戦となるイングランド戦(14日、マナウス)の試合開始時刻が3時間早まり、午後6時(現地時間、イタリア時間15日午前0時)に変更された。「テレビの勝利。FIFA(国際サッカー連盟)は大スポンサーであるテレビ局からの要請に押し切られた」とイタリアの各メディアは伝えている。
FIFAは6日に組み合わせ抽選会を開き、予選リーグ全64試合の日程を決定した。ところが、その数時間後、7試合の開始時刻の変更を発表。日本・コートジボワール戦もその対象となり、14日午後7時(日本時間15日午前7時)から同10時(同10時)に変更された。
日本の各メディアは「FIFAは酷暑を考慮した」とその経緯を説明したが、イタリアメディアの受け止め方は全く違う。
確かに、日本・コートジボワール戦など4試合は開始時刻が遅くなったが、3試合は逆に早められているのだ。18日のスペイン・チリ戦は午後7時が同4時に、22日のベルギー・ロシア戦は午後7時が同1時に変更された。この時期、南半球に位置するブラジルは、一応季節は冬とはいえ、アマゾン地帯に位置するマナウスをはじめ蒸し暑く、選手にとっては過酷な環境だ。これは、今年6月に行われたコンフェデレーションズカップでも実証済み。このため、イタリア代表のチェーザレ・プランデッリ監督は、プレー中の「給水中断」措置をFIFAに求めているほどだ。
ところが、こうした流れと“逆行”するかのような今回の試合開始時刻の変更。これら3試合に共通するのは、当該チームがヨーロッパの強豪国で試合時間が自国民にとって深夜から未明となることだ。たとえば、イタリア・イングランド戦は試合終了が明け方になる。
そこで、
「気候が(変更の)理由ではない。視聴者数を心配するテレビ局側がFIFAに数試合の開始時刻を変更するよう圧力をかけた」(コリエレ・デッラ・セーラ)
「ワールドカップはテレビに従う一方だ。これで、誰が実際に“プレー”を支配しているか明白になった」(ガゼッタ・デッロ・スポルト)
との論評が紙面に踊った。
ガゼッタ・デッロ・スポルトによると、W杯南アフリカ大会(2010年)におけるテレビの放映権料は24億ドル(約2400億円)で、同大会の総利益(約42億ドル)の6割を占める。ブラジル大会の放映権料は40億ドルを超えるという。
「FIFAとサッカーはテレビによって支配されている。今回の試合開始時刻の変更も、ファンは満足するかもしれないが、選手たちは逆だ。FIFAはサッカー選手労組の反対を押し切った。『FIFAにとって、テレビ局からの要求は選手の健康や安全よりも大切なのだ』と叫ぶ労組に、君らが間違っているとどうして言えようか」
そして、
「試合中、ピッチで悲劇が起こらないよう祈るばかりだ」と、選手たちの無事を願っている。