サッカー・イタリア代表新監督に、前ユヴェントゥス監督のコンテ氏が就任~マスコミのファン投票では「反対派」が6割を占め、スポンサー企業が年俸の半分を負担することへの反発も

2014年08月15日 10:05

チェーザレ・プランデッリ氏の辞任により空席になっていたサッカー・イタリア代表チームの監督に、前ユヴェントゥス監督のアントニオ・コンテ氏が就任することが決まり、14日夜(日本時間15日午前)、イタリアサッカー協会(Figc)のカルロ・タヴェッキオ会長が同協会HPを通じて発表した。コリエレ・デッラ・セーラ、ガゼッタ・デッロ・スポルトなど各メディアが報じている。

各紙の報道をまとめると、契約期間は2年、年俸は350万~360万ユーロ(約5億円)で歴代監督の中でも破格の金額となった。2016年夏にフランスで開催される欧州選手権への出場権を獲得することが、新監督の当面の使命となる。現在、コンテ氏はクロアチアでバカンス中で、19日にローマ市内のホテルで就任会見を開く予定。9月1日に代表メンバーを招集し、同4日にバーリで行われるオランダ代表との親善試合に臨む。同9日にはオスロでノルウェー代表と欧州選手権予選の初戦を戦うことになっている。

プランデッリ前監督がW杯ブラジル大会での惨敗の責任をとって辞意を表明すると、すぐにコンテ氏は次期監督の最有力候補に浮上した。コンテ氏も7月15日、電撃的にユヴェントゥスの監督を辞任し、代表監督受諾に向けた交渉の準備を進めていた。

コンテ氏とFigc側の間で、チームの運営面や技術面における考え方に隔たりはなかったが、年俸額が両者間で「大きな溝」となった。

コンテ氏が当初要求した額は、1年あたり450万ユーロ(約6億円)と見られる。これに対して、イタリアサッカー協会の定款では年170万~190万ユーロを超す額の報酬は禁じられている。その隔たりは大きく、一時はコンテ氏の代わりに、前日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏やロベルト・マンチーニ氏、ルチャーノ・スパレッティ氏らの名前も取りざたされた。

そこに助け舟を出したのが、代表チームのメーンスポンサーを務めるドイツのスポーツ用品メーカー「プーマ」。同社は年間180万ユーロ(2億5000万円)程度をコンテ氏の報酬の残りとして提供することを決め、Figc側も受け入れた。Figcのマーケティング担当は「(代表チーム史における)革新的な契約システム」とスポンサーマネーを代表監督の報酬に充てる新方式を自画自賛する。

ところが、イタリア国民の大多数はいたって冷ややかだ。トスカーナ州知事のエンリコ・ロッシ氏はFacebookを通して次のように糾弾する。

「コンテ氏の年俸は、約200人の教師あるいは看護士の給料を払える額だ。協会関係者らは、これが(サッカー界の)市場の論理なんだ、と私に言うだろうが、世間一般の感覚とはあまりに不釣合いで不公平である」

一方、コリエレ・デッラ・セーラ紙はウェブサイト上で「緊急読者アンケート」を企画し、コンテ氏が監督として相応しいか、その「是非」を問う投票を行ったが、結果は、投票者約11400人のうち61%が「反対票」を投じた。あるファンは「現在のイタリアサッカーにおける指導者のレベルを考えると、これだけのお金を代表監督の報酬に費やすのは無意味だ。それよりも若手の育成やサッカーのプロモーション活動に投資したほうが、はるかに将来のアッズーリのためになる」と手厳しい。また、スポンサー企業が代表監督の年俸を肩代わりすることに対しても、約5800人中61%が反対を表明している。(ちなみに、会長選挙前に「人種差別発言」をしたタヴェッキオ氏に会長選への辞退を求めた者は9割に達していた!)

コンテ氏は、かつてACシエナ監督時代、八百長を知りながら告知を怠った罪に問われ、裁定の結果、2012年シ-ズン途中に10か月の資格停止処分(その後、処分は4か月に短縮)を受けている。そうした過去も多くのイタリア国民は忘れてはいない。まさに、「タヴェッキオ新政権」とコンテ新監督にとって前途は多難だ。もし結果が出なければ、ファンや関係者から「更迭」を求める声が巻き起こるのは必至だ。