サッカーASローマのフロレンツィ選手、ゴール後に観客席に飛び込み、祖母と熱い抱擁~罰金処分を受けるも、「彼の祖母孝行はプライスレス」と賛辞の嵐
サッカー・セリエAのローマに所属するイタリア代表MFアレッサンドロ・フロレンツィ選手(23歳)が21日夜(日本時間22日)、ホームのスタディオ・オリンピコで行われた第3節カリアリ戦(2-0でローマの勝利)でゴールを決めた後、観客席で初観戦していた祖母に駆け寄り、熱い抱擁を交わすという出来事があった。この行為に対してフロレンツィ選手は警告(罰金)処分を受けたが、サッカーファンや関係者から「彼の孝行はプライスレス」との賛辞の嵐が巻き起こっている。コリエレ・デッラ・セーラ、ガゼッタ・デッロ・スポルトをはじめ国内外のメディアが一斉に報じている。
この試合、フロレンツィ選手は前半10分にマッティア・デストロ選手の先制ゴールをアシストすると、その3分後には2-0となるゴールを自ら決めた。彼にとっては半年ぶりのゴールだった。
フロレンツィ選手は駆け寄る味方選手を振り切ると、フェンスをヒラリと飛び越えてスタンドの中に。サポーターたちをかきわけて階段を駆け上がると、その先にいたのは祖母アウロアさんだった。フロレンツィ選手は祖母をガッチリ抱きしめ、喜びを分かち合った。
フロレンツィ選手は『スカイ・スポーツ』のインタビューで次のように語っている。
「おばあちゃんが僕の試合を見に来たのは初めて。子供のころだって一度もなかったんだ。でも今回、クタクタになるまで歩いてスタンドまで応援に来てくれたんだ。おばあちゃんは82歳なんだよ。僕がこの前の代表の試合でゴールをミスってしまった時に、『次は心配しなくていいよ。私がスタジアムに行くから。お前の姿を見るためだけに。だからお前も挨拶に来ておくれ』と言ってくれたんだ」
アウロアさんが「挨拶に来ておくれ」と言ったのは、おそらく「試合後」を意味していたのだろう。
「ところがフロレンツィ選手は、何かそれ以上のことを彼女にしてあげたかったのだ」(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
一方で、孫と抱き合った際、涙を流していたことを記者に尋ねられたアウロラさんは、
「私の夫もサッカーをしていたから」と答えたという。
「ゴールを決めてユニフォームの裾をまくって喜ぶことでさえ禁じられているのに、ましてやピッチの外に出て、フェンスを乗り越えて観客と抱き合うことなど許されるはずがなかった」(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
フロレンツィ選手の行為に対しては主審から警告処分が下された。同選手は罰金を支払わなければならない。
だが、イタリア国内外の各メディアや多くのサッカーファンは「黒人選手を差別する発言をしても何のおとがめもない人物がいるのに、感激のあまり祖母と抱き合って罰金処分だって?」と暗にイタリアサッカー協会のタヴェッキオ会長を皮肉る一方で、「今回の彼の祖母孝行はプライスレスだ」と一斉に称賛している。
ローマのルディ・ガルシア監督は「フロレンツィは罰金を払うことになる。でも、彼は大喜びで払うと思うよ。祖母と抱き合った光景は美しかった。私もすごくうれしかったよ。これが、サッカーの素晴らしい側面だ」とコメント。
イタリア代表のアントニオ・コンテ監督も「おばあちゃんと抱き合って喜ぶ姿は、純真な子供のようだったね。アレッサンドロの心根を知ることができてうれしかったよ」
そして、ロベルト・マンチーニ氏も「彼におめでとうと言いたい。その美しい行いに対して! カルチョはセンチメンタルなスポーツでもあるんだ」
さて、当のフロレンツィ選手本人は一時の興奮から覚めて、次のように祖母を思いやっている。
「おばあちゃんのことは、もうそっとしておいて欲しい。高齢だし、誰も彼女の家まで押しかけるようなことをしないことを願うよ」