サッカー・イタリア代表FWバロテッリ選手の実弟が、アマチュアリーグの試合でプレー中に相手サポーターから黒人を侮辱する野次を受ける
英サッカー・プレミアリーグのリヴァプールに所属するイタリア代表FWマリオ・バロテッリ選手(24歳)の弟、エノック・バルウアーさん(21歳)が、9月7日に行われたアマチュアリーグの試合で、相手チームのサポーターらから人種差別的な野次を受けていたことが明らかになった。ガゼッタ・デッロ・スポルト、コリエレ・デッラ・セーラなど各紙が伝えている。
バロテッリ選手とバルウアーさんは実の兄弟の間柄。両親はガーナ移民で2人はイタリア南部シチリア州のパレルモで生まれ、北部のブレシアに移り住んだ。その後、兄は里子に出され、イタリア人のバロテッリ夫妻の養子となったが、バルウアーさんは両親のもとで育ち、現在はイタリアサッカー・アマチュアリーグ(6部に相当)のヴァッレモニカでFWとしてプレーしている。
今回バルウアーさんが人種差別的な野次を受けた試合は、ダービーマッチとなったダルフォ・ボアリオ戦。
バルウアーさんによると、「ブレシアに黒人はいない」「黒人のクソ野郎」といった罵声が試合前のウオーミングアップの時から繰り返し浴びせられ、試合開始後にさらにエスカレートしたという。相手スタンドからの野次は、その音声が各メディアで流されている。バルウアーさんは後半31分までプレーした。
「ヤツらは猿の物まねをし、さらに兄さんのマリオを引き合いに出したんだ。なぜ彼らがこんな残忍な真似をするのか、なぜ僕がそんなにも強い憎しみを受けなければならないのか、その理由がまったくもってわからない」
「最初のうちは、野次にイライラして冷静さを欠いていた。でも少し経ってから、聞こえないふりをしたんだ。それでもカッとしそうな時が何度かあった」
「こうした攻撃を受けるのは今回が初めてのことではない。よく起きることさ。でも、ここしばらくはなかったんだ。こんなヤツら、相手にしたり、考えたりするだけでも時間の無駄さ」
「一番理解できないのは、俺を侮辱していたヤツらは、以前スタジアムの外で僕に挨拶をしにきた者たちと同一人物だったことだ。ムチャクチャな話だよ」
とバルウアーさんは怒りをあらわにコメントしている。
試合の翌日、DIGOS(公安総情報局)が刑事事件として捜査を開始し、相手クラブの事務所に出向き事情聴取を行い、これまで容疑者の一人として30歳の男性サポーターが取り調べを受けている。しかしながら、観客席を撮影したビデオや写真を見る限り、この男以外にも容疑者が増えそうだという。相手クラブ側は「人種差別をはじめとする、いかなる種類の差別についても当クラブは距離を置き、糾弾していく」との声明を出している。
FIFA(国際サッカー連盟)は『Say No To Racism』をスローガンに、長年人種差別撲滅キャンペーンを行っているものの、残念ながら、今回のような出来事は決してなくならない。
W杯ブラジル大会前の5月21日には、イタリア中部・コヴェルチャーノで行われたアッズーリの合宿においても、練習中のバロテッリ選手に対してサポーターの一部から「黒人のクソ野郎」との野次が飛んでいる。
さらには、8月のイタリアサッカー協会の会長選前には、当時立候補者だったタヴェッキオ現会長から「ここイタリアでは、それまでバナナを食べていた者がすぐにセリエAでレギュラーとしてプレーする」との人種差別発言が飛び出している。
その後、タヴェッキオ氏は何事もなかったかのように選挙戦を乗り切り、会長に当選している。
イタリアサッカー界のトップからしてこの始末なのだから、差別の撲滅は極めて難しいと言わざるを得ない。