コリエレ・デッラ・セーラ紙調査報道:「卒論代行サービスを追う」 ㊥
ある者は卒論の代筆を職業として行っており、またある者は、単に小遣い目当てのアルバイトとしてやっている。
いずれにせよ、彼ら「卒論コンサルタント」たちに共通していることは、“偽りの作者”が引き起こすリスクについてほとんど気にしていない、ということだ。
ゴーストライトの行為者に対して、行政上で処罰が規定されている一方で、依頼した学生には刑事罰が下されるおそれがある。有罪判決が下ると、判決文は全大学の構内に掲示される。
我々がコンタクトを取った“広告主”の何人かは、我々が用意した質問に平然と答えた。
「私は《professionista non altrimenti classificato》~専門的職業人~として、付加価値税の納税者登録番号を持っており、企業に対してニュースリリースやパンフレットなどのライティングサービスを提供しています」
アントニオはこう自己紹介した後、卒論の話に移った。
「大学生のために度々小論文を書いています。卒論の仕事も時々受けています。依頼した学生には“刑務所行き”の危険性がありますが、書いた方は最悪のケースでも罰金程度。2カ月に1本のペースで卒論の仕事をしていますが、丸ごと全部書くのはまれですね。ふだんは、論文の中に挿入する1章を書く程度にとどめています。あとは、文献目録の校正といった作業です」
どういう人が、どんな動機からコンサルティングを依頼してくるのか?
「9月には全国から20件ほど問い合わせを受けました。そのうち実際に受注したのは半分くらいです。領収書を発行すためにクライアントに個人データを尋ねると、驚いて二度と連絡してこなくなる人が結構います」
彼は説明を続けた。
「卒業を間近にした学生たちの多くは、勉強のほかに仕事もいくつかしており、卒論を書くための時間がありません。インターネットからのコピーでいいと言ってくる人もいますし、人前に出して恥ずかしくない程度に、校正や加筆のみを依頼してくる人もいます」
「クライアントの大半は、ただ最初のとっかかり(スタートするための後押し)を必要としているだけなのです。しかしながら、中には怠け者もいますし、はなから文章を書く能力がない者もいます」
さらに「Arco Iris」の説明を聞くと、卒論コンサルティングという仕事が常にプロフェッショナルなものであり、組織されていることが実感できる。
「他人のために論文を書くことは、かつて犯罪でしたが、いまでは処罰の対象から外されています」
同センターの責任者であるロザリオ・ヴェッレーカは断言する。
「もし学生が他の人間が作った論文を利用することを望むのであれば、それは問題にはなりません。出版業界は、こうした『オーダーメイド』の仕事で一杯です。それでもって、我々が提供するのは論文ではなく『教育上のリサーチ』なのです。言ってみれば、ギリギリ合法の取引です」
「私たちにコンタクトを取る者の90%はふだん働いている学生です。彼らには卒論に割く時間がなく、たいてい年齢も上です。万が一、提出期限までに間に合わずに、大学にもう1年間分の登録料を払うことになるよりは、最初からそれを“買う”方が安くつくのです。こういう理由からも、学生たちは我々を頼ることを選ぶのです」
「自分が卒論書きを始めたのは、ほんの偶然からなんです。その学生は出産を目前に控えており……」
ある女性ライターはこう語りだした。
「それから口コミで、私がゴーストライターを引き受けるというウワサが広がり、恋人からインターネットに広告を掲載するよう説得されたんです。最初に依頼を受けた時は、もう二度とないだろうと思ったのですが……」
(続く)