ラ・レプッブリカ紙記者の「ミラノ麻薬スーパーマーケット」潜入レポート

2014年11月21日 14:36

ミラノ市の南東のはずれに位置するロゴレード(Rogoredo)地区に、ロンバルディア州最大の“ヘロイン市場”がある。ラ・レプッブリカ紙のサンドロ・デ・リッカルディス記者が麻薬密売現場に潜入、そのレポートを記事と動画で同紙オンライン版に掲載している。

https://milano.repubblica.it/cronaca/2014/10/26/news/rogoredo-99013953/?ref=HREC1-12

目指す場所は、まっとうな人間たちが暮らしている“日常世界”からわずか10分の場所にあった。

ロゴレード駅を背にサンタリアルド(Sant’Arialdo)通りを歩いていくと、車が矢のような速さで次々と通過していく幹線道路のガードレールの切れ目に、森へと続く小道がある。うっそうとした木立と廃棄物の山。使用済みの注射針と血で汚れたティッシュが散乱する地面を踏みしめながら進むと、2~3人の見張り役が立っている。少しでも“怪しい”気配のある者は追い返されるが、もし「やけっぱちになった人間」を装うことができれば、密売現場までたどり着くことができる。

ここでは、モロッコ人の一団が麻薬密売マーケットを一手に仕切っている。このヘロインの“スーパーマーケット”では、毎日100人もの麻薬依存症者たちにブツを売りさばいている。彼らはミラノの各地域から、またローディやパヴィーアから、さらにはピアチェンツァ、ブレーシャ、ヴェローナ、パルマ、レッジョ・エミーリアからもやって来る。ロゴレード駅にはローカル列車や地区間列車が停車するのだ。

密売現場は道路からは見えない。警察も入り込めない。ロゴレード森の中に一歩足を踏み入れると、30年前にタイムスリップする。永遠に姿を消したと思われていた、1980年代のあるひとつのミラノのイメージがそのまま残っている。かつてヘロインはミラノの中心部を襲い、各広場で死者を出したのだ。

頬のこけた男たち。彼らのダラダラと続く会話。両腕に残る注射針や絆創膏の痕。もう一刻も待てないとばかり、イライラした表情でタバコを吸う者たち。週末になると、こうした典型的なコカイン中毒者に交じって、カップルや若者グループもやってくるが、彼らは明らかにフツーの人間たちである。

“密売の森”で取引されるブツの値段は相場よりかなり安く、量も有り余るほどある。そういうわけで、毎日100人を超す馴染客を引き寄せている。10ユーロと交換で、ロゴレードの黒服の男たちは、白い粉末が入った袋を開けるとスプーンでドラッグを小袋に入れる。破格値なのは、賞味期限切れだったり粗悪品であったりするからなのだが、ここにやって来るような者たちにとって「品質」などどうでもよいのだ。ここにやって来るために、路上でスリを働いたり、駅構内で盗みをしたり、各車両を回って通勤者らから施しを求めたりして作った10ユーロを握りしめてやって来るような者たちにとっては。

1本の巨大な樹の陰に潜むモハメッドは、密売団の第一の“歩哨”である。ヘロインの影響から動作は緩慢で、話している時でもタバコをくわえている。彼は半分「常連客」で半分「見張り番」である。こうして入り口で一日中監視をすることで、彼はタダで麻薬を得ることができるのだ。そして、監視をしながら白い粉をスプーン上で熱している。傍らには、ひっくり返したバケツがあり、そこには注射器が置かれている。

「オレはただここで吸っているだけだ。ヤクを買いたければ、もう少し歩け。オレは何も売ることはできない」

モハメッドは、たどたどしいイタリア語でこう言うと、草木の茂みから垣間見える一団の後に付いていくよう指示した。その一団は、黒い衣装に身を包んだ5人の若い男と1人の若い女。手にはビールを持ち、紐でつないだ1匹の犬を連れている。

さらに進むと、数人の男たちがたむろしている。そのうちの一人がタバコを求めてきた。

モロッコ人たちはベニ・メラル(Beni Mellal)出身であり、アフリカからミラノまでの全密売ルートを支配している。彼らは不法入国者ではない。イタリア人女性と結婚して、正規の滞在ビザを持っている。彼らの住まいはコルヴェット地区やロゴレード地区にある公営住宅だが、メルセデスやBMWの新車を乗り回している。彼らは所得の申告はしていないが、泥土で作られた粗末な家に未だに暮らすアフリカの故郷の村の郊外に、高級別荘を建てている。そんな彼らのもとに毎日、新たな「ヘロインの奴隷」たちが駆け寄って来る。彼らのほとんどはイタリア人である。

ある者はドラッグをポケットの中に隠して立ち去り、またある者は駅の公衆トイレの中に隠れ場所を探す。しかしながら、彼らの大半は森の中にとどまり、仲間たちが潜む隠れ場所を探し出し、そこで注射を打ったり、コカインを嗅いだりする。掘り返された四角の穴の中には、注射器や血の付いたティッシュが投げ捨てられ、ヘロインの残りカスが付着した筒状に巻かれたセロファンなどが、足元せましと転がっていた。