「心癒される風景」 NO.1 マルケ州の丘
まずは、イタリア人の「心癒される風景」をご紹介する前に、僕自身の体験を語ろう。
観光客にはなじみが薄いが、マルケ州の丘は捨てがたい。
アンコーナからイェージを抜けてファッビアーノに向かえば、
黄・緑・茶の三色のパッチワークのような丘が
なだらかな曲線を描いて、旅人を迎えてくれる。
南へ進路を変えれば、夏にはオペラの祭典を楽しめるマッチェラータに辿り着く。
周辺には、母親の胸のような慈愛に満ちた丘がある。
ある日、僕は女友達と丘の中腹に立つ古い農家を改装したレストランに入った。
屋外にテーブルが並べてあったので、外で食事をすることにした。
マルケは海の幸も山の幸も豊富だ。川魚や牛、ラム、ウサギの肉。
キノコの種類も豊富で、トリュフも採れる。
黒トリュフを使ったラザーニャは絶品だ。ワインは、ヴェルディッキョがお勧め。
少し苦みがあるが、すっと口の中で消えていく。
食事を終えると、ボーイがやってきて、僕たちにこう尋ねた。
「少し休んでいきますか?」。
そう、レストランの階上は、ホテルになっていたのだ。
それも、2時間ご休憩の部屋と言えば、想像がつくだろう。
僕は、その時、ベルトルッチの映画「ルナ」を思い出した。
確か、同じような場面があったはずだ。男と女が食事を終えて、
二階に上がるシーンを思い浮かべながら、僕はドギマギして答えた。
「また、今度にしよう。先を急いでいるんだ」。
ああ、なんという野暮な男なんだ。でも、素晴らしい丘と料理に
免じて許してもらうことにしたのだ。
Photo by ENIT
マルケ州に関する情報はこちらまで。
https://www.italy-marche.info/jp/index.html