ひまわり俳句新聞27号
<母の俳句>
心願の香にむせぶかな金木犀
竜淵に潜み心臓修理無事
心臓の血さらさら流る秋の川
脈々と五体健全菊人形
退院の爺の食欲秋渇き
吾子は病み爺快復の秋思かな
目に見えて秋色となる身の辺り
「トラ」は痩せ「タマ」は太っちょ露万朶
玄関の鍵チャラチャラと秋日傘
獅子唐の辛さしみじみ秋の夕
隅っこの小菊こんもり影ほのか
秋湿り天はすぐそこ空草(うつほぐさ)
熟れるほど人声近き秋果かな
竹藪の小径に隠るそぞろ寒
朝刊を手にずっしりと秋時雨
天高し食べ頃問うてメロン抱く
老境に達して身軽花野道
よどみなく秋の七草言うは良
ノンステップバス喜々と揺れ秋日和
栗おこは栗ニケづつの天こ盛り
<息子の俳句>
ふぞろいの菱形ひかる秋の海
ローマ晴れここは秋色はじまれり
鉄橋の芒はまひる浴びにけり
父を詠むただ字余りの夜長かな
魚ならば好きな海ゆき冬隣
台風の去って痕なき空の色
捨扇しづかに置いて人離る
一木の枯葉の散りて森揺らす
雨雲のこぼるるひかり秋の園
むらさきは東方の色秋桜
黒猫の濃き影昏れて冬支度
ふんふんと月頷いて摩天楼
秋雨やたこ焼きぽっぽ湯気を立て
炊きたての新米香る目覚めかな
沐浴の心構えぞ冬近し
冬淡きひかりの先へ迷いけり