『ラ・グランデ・ベッレッツァ』でオスカー獲得のパオロ・ソレンティーノ監督にローマ市の名誉市民の称号が与えられる

2014年03月18日 14:15

《La grande bellezza》で今年度のアカデミー外国語映画賞を獲得したパオロ・ソレンティーノ監督がローマ市の名誉市民に選ばれ、14日にカンピドーリオ(同市庁舎)で授与式が行われた。コリエレ・デッラ・セーラ、ラ・レプッブリカなど各紙が伝えている。

同作品の英題は「The Great Beauty」、日本語タイトルは「追憶のローマ」。「イル・ディーヴォ(邦題:魔王と呼ばれた男)」で2008年カンヌ映画祭審査員賞を受賞したソレンティーノ監督が再び主演にトニ・セルヴィッロを迎えて、陽光きらめく盛夏のローマを舞台に、享楽的な生活にふける裕福な作家とその内面の虚無感を描いている。フェデリコ・フェリーニの「ラ・ドルチェ・ヴィータ(甘い生活)」「ローマ(フェリーニのローマ)」を彷彿とさせるタッチで、審査員や評論家らは「現代版・甘い生活」と絶賛。「ローマの素晴らしさを世界に伝えた」として、ローマ市議会はナポリ生まれのソレンティーノ氏に名誉市民の称号を与える条例を採択した。

「ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の間」で催された授与式では、イニャツィオ・マリーノ市長が「このたびソレンティーノ氏を名誉市民とすることは、我々の町を築き上げた人たちへのオマージュである。彼の作品は、ローマのため、イタリアのため、そして映画を愛するすべての人に捧げられたものであり、忘れがたい贈り物である」と挨拶。羊皮紙の証書と、ロムルスとレムスを養育した雌オオカミ(ローマの象徴)のブロンズ像を贈るとともに、伝統に則って「本日、ローマは君を最も高貴な子たちの一員に加える」と宣言した。

式に同席した、俳優のカルロ・ヴェルドーネ氏は次のように祝福のメッセージを述べた。

「ソレンティーノ氏は、これまでローマを語ることができた知的な監督たちの中でも最高の監督だ。彼は、数多くの『美しさの独創性』を最高の形でつかみ取ることができる。この作品はよく『退廃のローマ』を描いていると評されるが、私に言わせてもらうならば、そうした解釈は一面的なものにしか過ぎず、近視眼的である。彼は私たちに、ローマが持つ荘厳な潜在能力を示してくれた。つまり、フェリーニがかつて語ったように、この町は、『臨終と再生』の輪廻を宿命付けられているのだ。この作品は、退廃というもの以上に、一社会の分解について物語っている。ローマは退廃に逆らうことができる、ということを我々に思い起こさせてくれた点で、ソレンティーノ氏は名誉市民に値する」

謝辞を述べるソレンティーノ氏も興奮気味だった。

「私は悩みぬいた末に、ヴェルディやマンゾーニ、マルコーニら名立たる人たちが受け取ったローマ名誉市民のリストの中に加わるという、許しがたい過ちを犯してしまった。一度も読んだことはないが、ブルース・チャットウィンが書いた本のタイトルがいま頭に浮かぶ。まさに『どうして僕はこんなところに』という気分だ」

そして、冗談(と皮肉)交じりに、こう締めくくった。

「今回私に名誉市民の称号を与えることに反対票を入れた議員もいたと聞くが、ともかく彼ら全員に対して感謝を申し上げたい。なぜならば、私も同じ立場なら同じ選択をしたと思うからだ。もちろん賛同してくれた人にも感謝を申し上げるが、彼らは間違いをしてしまったようだ」

なお、『ラ・グランデ・ベッレッツァ』はゴールデンウイーク中に東京・有楽町で開催される今年のイタリア映画祭で日本初公開される。