「先入観を消し去って!」と伊タンブレロ協会がユベントスのコンテ監督を試合に“招待”

2013年12月14日 12:10

「タンブレロ」と呼ばれる球技を御存じだろうか。

語源はイタリア語のtamburello(発音は正確にはタンブレッロ)、いわゆる楽器の「タンバリン」。

タンバリンのような形をしたバット(ラケット)でテニスのようにボールを打ち合うスポーツである。

発祥の地はイタリア、その源流は古代ローマ時代にまでさかのぼる。16~18世紀には北部イタリアで盛んに行われていたという。現在の公式競技ルールは1920年に作られたとされる

日本ではまだ馴染が浅いが、ヨーロッパでは国際大会も頻繁に開催されている。

こうした由緒ある歴史を持つイタリアのタンブレロ協会が、「先入観で曇った目で我々のスポーツを見てもらいたくない」と、サッカーセリエA・ユベントスのアントニオ・コンテ監督に“招待状”を送り、話題を呼んでいる。コリエレ・デッラ・セーラ、ガゼッタ・デッロ・スポルトなどイタリアメディアが報じている。

事の発端は、11日に行われたUEFAチャンピオンズリーグのグループリーグ最終節、イスタンブールで行われたガラタサライ(トルコ)とのアウェーゲーム。引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まるユベントスだったが、試合終盤にスナイデルに先制ゴールを決められ、0-1で敗れ、ガラタサライが逆転で16強入りをものにした。

実は、この試合は10日に行われる予定だったが、降雪により前半31分、0-0のまま試合は中断、翌日に延期となった。ところが、再試合中も雪は止まず、ピッチは泥でぬかるんだ状態。敗戦後、コンテ監督は記者会見場で怒りを主催者側にぶつけた。「我々は試合の再度延期を試みた。しかし、聞き入れてもらえなかった。審判は昨日、危険だから中断すると言った。ならば、今日は危険じゃなかったのか?」と噛みついた後、「我々は途方もないペナルティーを科せられた。こんなのはサッカーじゃない。タンブレロの試合だ」と“放言”してしまったのだ。

この発言に黙っていなかったのが、イタリアタンブレロ協会だ。

エミリオ・クロサート会長は声明文を発表、「我々の競技は、テクニカルで、ダイナミックで、スペクタルにあふれたものであり、現在イタリアは男子も女子も世界チャンピオンである」と反論するとともに、「我々はコンテ監督を観客として試合に招くことにする」と“招待状”を送ったのだ。

タンブレロという競技を見たことがない人には、コンテ監督のコメントに感じ取られる“ニュアンス”が理解しにくいかもしれない。

日本におけるタンブレロ競技の普及団体である「日本タム協会」の公式サイトを見ると、原田大輔理事長がこう記している。

「タンバリンを使ったスポーツをやっています、とタム競技を紹介する時、ほぼ決まって相手の反応の中に小さな笑いが含まれる。確かにこのスポーツの話を初めて聞いたときは、自分自身も同じようなリアクションをしたので、どのようなイメージが頭に広がっているのかはとてもよくわかる」。同コメントなどから察するに、コンテ監督の発言にある種のタンブレロへの「偏見」を感じ取っても不思議ではない。

そして、原田氏はこう書き続けている。

「しかし、一度でもこの競技風景を見てもらえれば、意外にも真剣でちゃんとしたスポーツであるかが伝わるはずだ」

クロサート会長もコンテ監督に実際にタンブレロの試合を生で見てもらって、その魅力を感じ取って欲しかったに違いない。

同協会によると、かつてインテルが1953、54年と2季連続でスクデットを獲得した際、アルフレード・フォーニ監督が全体練習にタンブレロのメニューを採り入れていたのだという。

さて、イタリアサッカー界の王者を率いるコンテ監督が、協会側の招待を受け入れるかどうか、興味深いところだ。