「地方の小クラブはセリエAに昇格してはならない」~ラツィオ会長ロティート氏の電話での発言がメディアに暴露され、物議を醸す

2015年02月15日 16:21

エミリア=ロマーニャ州モデナ県にある人口6万4000人の地方都市カルピが今、イタリアサッカーファンの注目を浴びている。

資金不足に苦しむイタリアサッカー界の中でも、とりわけ低予算で運営されている小クラブ『カルピFC』が、目下セリエBの首位を独走中、1909年のクラブ創設以来初のセリエA昇格が現実味を帯びてきたのだ。

そんな折、セリエAの名門クラブ・ラツィオの会長で、イタリアサッカー連盟内でも大きな政治力を持つクラウディオ・ロティート氏から「カルピのような地方の小クラブはセリエAに昇格してはならない。それは我々にとって1リラの得にもならないどころか、イタリアサッカーを崩壊させてしまうからだ」との発言が飛び出し、イタリアサッカー界を大きく揺るがしている。

騒動の発端は、レーガ・プロ(旧セリエC=3部に相当)に所属するイスキアのピーノ・イオーディチェGM(ゼネラルマネジャー)が『ラ・レプッブリカ』紙にロティート会長との電話の録音を暴露したこと。

イオーディチェGMによると、レーガ・プロのサレルニターナも保有するロティート会長は、同リーグのマリオ・マカッリ会長を信任しないグループの中心の1人である同GMに対して「マカッリ会長を支持しなければクラブへの分配金をストップする」との脅しをかけてきた。このため「自らの身を守るために、ロティート会長に電話をして彼との会話を録音した」という。

レプッブリカ紙電子版で紹介された2人の会話の中で、ロティート会長は「自分には計画がある。半年以内に(レーガ・プロの)収入を増やす」などと発言。その後、話題はセリエAに移り、同リーグのマウリツィオ・ベレッタ会長を「ヤツがこれまで何を決めてきたというんだ。何も決める力などない」と貶める発言をした上で、セリエAの収入を増やすための自らの改革案を主張。そこで「地方の小クラブ」がセリエAに加わり、テレビ放映権料が下がることを阻止しなければならない、との持論を展開した。

「(セリエB会長の)アボーディに言ったんだ。我々は変わらなければならない、とね。もしカルピが昇格してくれば…あの何の価値もないクラブをセリエAによこすのであれば、2、3年後に我々は1リラだって手にすることができなくなる。私は『スカイ』や『メディアセット』との交渉をまとめて、12億ユーロの放映権を手に入れた。私がうまくやったおかげだよ。過去10年間、誰にもできなかったことだ。それなのに、3年後にラティーナ、フロジノーネ(注:両チームとも現在セリエBで活躍中)といった小クラブもセリエAに昇格してくれば...いったい誰が放映権を買う?」

今回のイオーディチェGMの“暴露”は、各方面に様々な波紋を呼んでいる。私的な会話を録音し、公にするという同GMの手法の是非はさておき、ロティート会長の“ポリシー”は大半の関係者・ファンからヒンシュクを買っている。

セリエBのアボーディ会長は、ツイッターの中で「(昇格基準に関しては)ピッチ上の結果がすべて。この原則は、我々セリエBの全クラブ、いやイタリアサッカー連盟内のすべてのクラブに平等である !」「カルピはこれまでやってきたことを今後もやり続けるだけである。威厳とクオリティと毅然とした姿勢を保って。一体、アイツは何がしたいんだ? 他にやることがたくさんあるだろ ! もういい加減にしろ !」とロティート氏を糾弾した。

一方、こうした世間からの非難を受けて、ロティート氏も反撃に出た。13日、ミラノで開かれたイタリアサッカー連盟の会合の席上、47分間にわたって自らの立場を次のように“独白”している。

「何も圧力をかけているのではない。問題提起をしただけだ。イタリアサッカー界を取り巻く現在の環境においては、カルピはセリエAで持ちこたえることはできない」

「私はカルチョにおける『システムの透明性』を求めているんだ。これまで、どれだけのお金がいつどこでどのように使われたのか、誰も知ることができなかった。そこを透明にしない限り、今後、クラブの買い手が現れるとは考えられない」

「もしパルマが今日中でも滞納している税金を支払わなければ、月曜日には崩壊してしまう。カルチョのシステムは崩壊しかけている。アマチュア上がりのクラブ、最高でも2000人の観客しか集まらないようなクラブをいくつも抱えて、セリエAは一体どうやって放映権を売るんだ? 各クラブはどれだけの収益を手にすることができるのだ? 100の収入に対して支出が150もあるようなシステムなんだよ。もしこのようなシステムがこのまま続くのであれば破滅だよ。クラブは正しい方法で運営されなければならない。正しいシステムとは、まず各リーグとも18までチーム数を減らすことだ」

ロティート氏は清掃・警備会社を経営する実業家。2004年に経営難に陥っていたラツィオを買収し、会長に就任。以来、優れた経営手腕を見せる一方で、その歯に衣着せぬ毒舌で数々の物議を醸してきた。昨年12月には、ユヴェントスのジュゼッペ・マロッタGMを侮辱したとして1万ユーロの罰金をイタリアサッカー連盟から命じられたばかりである。

今回もマスメディアやファンの反応は同氏にかなり厳しいが、「連盟内で私の計画に賛同している者はかなりいる」とロティート氏が自信を見せるように、昨今のパルマFCの惨状などを受けてクラブ運営に危機感を覚え、ロティート氏の辣腕に期待を寄せる関係者も一定数いることも事実である。
https://www.repubblica.it/sport/calcio/2015/02/13/news/il_padrone_lotito_beretta_conta_zero_carpi_in_a_rovinoso-107190374/?ref=HRER3-1

https://www.gazzetta.it/Calcio/13-02-2015/lotito-telefonata-lazio-beretta-conta-zero-carpi-non-puo-andare-serie-a-100870980538.shtml